精神面へのアプローチと効果 尿臭を気にしない老人への指導を通して
【事例紹介】K氏84歳男性軽度の痴呆症状がみられる【はじめに】K氏はもとより清潔に対する関心が乏しく, 痴呆の進行に伴い清潔の自己管理がより一層困難となり, そのため一人暮らしは無理と思われ不自由者棟に転寮(平成9年10月20日)となった. 転寮当時のK氏は尿汚染してもそのままで, 衣類, 室内の尿臭が強くても気にならない様子であった. そこで私達は清潔の援助を計画, 実施したが結果的に押し付けの援助となり, コミュニケーションを図る上で最も重要な信頼関係に支障をきたすことになった. その後, 閉鎖的になってしまったK氏に対する一方的な押し付けの指導を反省し, 精神面に注目しアプローチした結果...
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| Published in | 日本ハンセン病学会雑誌 Vol. 67; no. 3; p. 454 |
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| Main Authors | , , , |
| Format | Journal Article |
| Language | Japanese |
| Published |
日本ハンセン病学会
01.12.1998
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| Online Access | Get full text |
| ISSN | 1342-3681 |
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| Summary: | 【事例紹介】K氏84歳男性軽度の痴呆症状がみられる【はじめに】K氏はもとより清潔に対する関心が乏しく, 痴呆の進行に伴い清潔の自己管理がより一層困難となり, そのため一人暮らしは無理と思われ不自由者棟に転寮(平成9年10月20日)となった. 転寮当時のK氏は尿汚染してもそのままで, 衣類, 室内の尿臭が強くても気にならない様子であった. そこで私達は清潔の援助を計画, 実施したが結果的に押し付けの援助となり, コミュニケーションを図る上で最も重要な信頼関係に支障をきたすことになった. その後, 閉鎖的になってしまったK氏に対する一方的な押し付けの指導を反省し, 精神面に注目しアプローチした結果, 良い成果が得られたので報告する. 【目的】信頼関係の回復を図り, 精神面の安定と清潔面の改善を図る. 【問題点】1)指導に対して閉鎖的で拒否の姿勢がみられる. 2)入居者, 職員と交流する機会が少なく活気もみられない. 3)衣類, 室内の尿臭が強く, そのままにしていることがほとんどである. 【対策】1)受容の姿勢で接するように努め, 押し付けの指導を避ける. 2)興味を示す話題, 作業を通じて自主的な会話, 行動を促す. 3)清潔を維持する必要性を説明し, 衣類が尿汚染した場合は更衣し洗濯に出し, 清掃もするよう指導する. 自主的に行なうまで一緒に行なう. 【結果】私達はカンファレンスの際にK氏の行動全てが本人にとって意味があるという事を確認しあい, K氏と一緒に受容の姿勢で行動する機会を増やした. このようなアプローチをしたところ次のような結果が得られた. (1)スタッフに対して自主的に話し掛けるようになり, 信頼関係が回復した. (2)鉢植えの植物の世話をする習慣がつき, またレクリエーションにも参加するようになった. また, 入居者, 職員と交流する機会が増え, 生活のリズムも確立された. (3)自主的に更衣, トイレの汚染箇所の清掃をするようになり, 尿臭もなくなった. 【結論】清潔な環境を維持する事だけにとらわれず, 受容の姿勢でK氏が納得できるような指導をスタッフが統一して行なったことが, 信頼関係を回復することにつながった. また興味を示す話題, 作業を共有し, コミュニケーションの時間を多く持ったことも効果が大きかったと思われる. その後はスタッフのアプローチがスムーズに受け入れられるようになり, すべてのアプローチが有効なものとなった. |
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| ISSN: | 1342-3681 |