HTLV-1-associated myelopathy (HAM)のリハビリテーションの検討

【目的】HTLV-1-associated myelopathy (HAM)は, レトロウイルスの関与した新しい疾患概念として, 1986年納らにより提唱され注目されている疾患である. 我々は, HAMのリハの経験について第26回本学会において報告した. 今回は, リハにおける経過, 問題点を中心に報告する. 【対象】1987~1989年の3年間に当院理学療法部においてリハを施行したHAM症例20例(男4例, 女16例)を対象とした. 平均年齢48.3歳であり, 中年女性が多かった. 【結果】障害像としては痙性対麻痺であり, 全例上肢ADLは保たれており, 支持性も良好であった. 幹~下肢の筋...

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Published inリハビリテーション医学 Vol. 27; no. 7; p. 565
Main Authors 山鹿眞紀夫, 高木克公, 森修, 片岡泰文, 森沢佳三
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本リハビリテーション医学会 1990
社団法人日本リハビリテーション医学会
The Japanese Association of Rehabilitation Medicine
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ISSN0034-351X

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Summary:【目的】HTLV-1-associated myelopathy (HAM)は, レトロウイルスの関与した新しい疾患概念として, 1986年納らにより提唱され注目されている疾患である. 我々は, HAMのリハの経験について第26回本学会において報告した. 今回は, リハにおける経過, 問題点を中心に報告する. 【対象】1987~1989年の3年間に当院理学療法部においてリハを施行したHAM症例20例(男4例, 女16例)を対象とした. 平均年齢48.3歳であり, 中年女性が多かった. 【結果】障害像としては痙性対麻痺であり, 全例上肢ADLは保たれており, 支持性も良好であった. 幹~下肢の筋力低下が目立ち, 多くはMMT上2~3程度と骨盤帯周囲筋群の弱化が顕著であった. 移動能力を中心とした納らの運動重症度は, リハ開始時には2~10:平均5.4であり, 歩行不能および介助歩行レベルが6例であった. また, ADL面では, 和式動作や立位応用動作の障害が主であった. 最終評価時(平均2.9カ月)の運動重症度は, 2~10:平均4.55であり, 1~2ランク改善12例, 不変8例であったが, 不変の例でも, 耐久性, 安定性の向上が多くに認められた. 最終的に, 70%が家庭復帰した. 【結語】HAMのリハにおいて, 筋力低下に伴う支持性の低下が特に問題であった. 他の変性疾患のリハと同様, 進行に応じた長期的な対応が課題である. 質問 湯布院厚生年金病院後藤浩:リハビリテーションと他の治療は同時に開始したのか. またリハビリ訓練として, 他の治療との有用性はいかがなものか. 答 山鹿眞紀夫:薬物療法の効果判定が終った時期から(多くは減量時期から), リハを開始しており, 影響を全く否定はできないが, ほぼリハ効果と考えて良いと思われる. 質問 船橋整形外科道永幸治:HAM症例に, 人工骨頭置換術等の手術療法を行った際, 術直後のリハビリテーションで注意する点はありますか. 答 山鹿眞紀夫:骨折受傷原因が, HAMによる不安定性の影響が考えられ, 全身的耐久性向上に時間は必要となるが, 基本的には高齢者の大腿骨頸部骨折後とほぼ同等であった. 質問 岩崎敬雄(座長):Neurotechによる治療の改善の持続期間はどの程度か. 答 山鹿眞紀夫:短期の使用で良く反応した例では, 効果持続も良いが, あまり反応の良くない例では, 持続も良くない印象であった.
ISSN:0034-351X