口腔扁平上皮癌におけるIV型コラーゲンα鎖の免疫組織化学的検討

【目的】IV型コラーゲンは基底膜の主要な構成成分であり, 臓器特異的にα1~α6鎖のサブタイプが存在する. 癌の浸潤においては基底膜の消失が関与していると考えられている. 大腸癌, 乳癌などで各α鎖の消長について報告がなされ, 癌の浸潤との関連性が示唆されているが, 口腔癌についての報告はみられない. そこで今回我々は口腔の扁平上皮癌におけるIV型コラーゲン各α鎖の消長を免疫組織化学的に検索し癌の浸潤性との関連を検討した. 【方法】岡山大学歯学部附属病院病理検査室で扱った扁平上皮癌30例について, IV型コラーゲンα1~α6鎖の各抗体(岡山重井研究所より供与)を用いて免疫組織化学的染色を行った...

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Published in歯科基礎医学会雑誌 Vol. 43; no. 5; p. 630
Main Authors 玉村亮, 中野敬介, 辻極秀次, 長塚仁, 井上正久, Siar Chong Haut, 永井教之
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 歯科基礎医学会 20.08.2001
Japanese Association for Oral Biology
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ISSN0385-0137

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Summary:【目的】IV型コラーゲンは基底膜の主要な構成成分であり, 臓器特異的にα1~α6鎖のサブタイプが存在する. 癌の浸潤においては基底膜の消失が関与していると考えられている. 大腸癌, 乳癌などで各α鎖の消長について報告がなされ, 癌の浸潤との関連性が示唆されているが, 口腔癌についての報告はみられない. そこで今回我々は口腔の扁平上皮癌におけるIV型コラーゲン各α鎖の消長を免疫組織化学的に検索し癌の浸潤性との関連を検討した. 【方法】岡山大学歯学部附属病院病理検査室で扱った扁平上皮癌30例について, IV型コラーゲンα1~α6鎖の各抗体(岡山重井研究所より供与)を用いて免疫組織化学的染色を行った. 対照として正常口腔粘膜5例について同様の染色を行った. 【結果】正常口腔粘膜の基底膜においてはα1, α2, α5, α6鎖の局在が認められ, α1, α2だけでなくα5, α6鎖も基底膜の構成成分であることが示された. 又, 血管基底膜はα1, α2鎖のみより構成されていた. 扁平上皮癌においては癌の浸潤部では基底膜のIV型コラーゲンが部位により点状あるいは完全に消失して観察され, 各α鎖の局在ではα5, α6鎖がα1, α2鎖より先に消失する傾向が認められた. 【考察】口腔粘膜の癌の浸潤においてα鎖の消長が癌の浸潤と密接に関連している可能性が示唆された.
ISSN:0385-0137