ラット咽喉頭部における水誘発嚥下の促進と抑制

【目的】近年, 各分野で摂食嚥下障害の研究が進められている. 高齢者における嚥下困難は咽喉頭部の感受性の低下によって生じ, 感受性の低下には神経ペプチドであるsubstance P(SP)の関与が示唆されている. また, 咽喉頭部の水線維の応答性は塩酸キニーネ(QHC1)によって影響を受けるといわれている. 今回, ラットにおいて咽喉頭部の水誘発嚥下が, SPおよびQHC1によってどのような影響を受けるか調べた. 【方法】ウレタン麻酔下の成熟ラットを背位に固定し, 気管カニューレと食道カニューレを挿入した. ポンプを用い口腔から挿入したチューブを通して刺激液(蒸留水, QHC1)を流し, 咽喉...

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Published in歯科基礎医学会雑誌 Vol. 43; no. 5; p. 597
Main Authors 梶井友佳, 真貝富夫, 北川純一, 高橋義弘, 田口洋, 山田好秋
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 歯科基礎医学会 20.08.2001
Japanese Association for Oral Biology
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ISSN0385-0137

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Summary:【目的】近年, 各分野で摂食嚥下障害の研究が進められている. 高齢者における嚥下困難は咽喉頭部の感受性の低下によって生じ, 感受性の低下には神経ペプチドであるsubstance P(SP)の関与が示唆されている. また, 咽喉頭部の水線維の応答性は塩酸キニーネ(QHC1)によって影響を受けるといわれている. 今回, ラットにおいて咽喉頭部の水誘発嚥下が, SPおよびQHC1によってどのような影響を受けるか調べた. 【方法】ウレタン麻酔下の成熟ラットを背位に固定し, 気管カニューレと食道カニューレを挿入した. ポンプを用い口腔から挿入したチューブを通して刺激液(蒸留水, QHC1)を流し, 咽喉頭領域を刺激し嚥下を誘発した. 嚥下の生起は顎舌骨筋の筋電図, 喉頭の挙上を指標とした. 上喉頭神経の神経線維束から神経活動を記録し, 積分応答の大きさを比較した. SPは大腿静脈から静注した. 【結果】咽喉頭部の水刺激により嚥下は誘発され, SPの静注により水誘発嚥下の回数は増加した. QHC1刺激によっても嚥下を誘発することができたが, QHC1刺激後は水誘発嚥下の回数は著明に減少した. SP静注後上喉頭神経の自発活動は増加し, 水刺激に対する応答も増大した. また, QHC1刺激後は上喉頭神経の自発活動が減少し, 水刺激に対する応答も減弱した. 【結論】咽喉頭部の水誘発嚥下はSPにより促進され, QHC1により抑制されたが, これは嚥下誘発に関与する水線維の特性を反映している.
ISSN:0385-0137