脱ニトロ化酵素の活性測定法の開発とラット組織における分布

炎症反応時に産生されるペルオキシナイトライトはタンパク質のチロシン残基をニトロ化し, その生理機能を損なう. 一方, 酵素的な脱ニトロ化反応によりニトロ化タンパク質の機能を回復させる可能性を示唆した. 今回, 簡便かつ定量可能な酵素活性測定法を開発し, 組織分布を検討した. 【方法】ニトロチロシン含有ペプチドに蛍光基を結合させ, 脱ニトロ化酵素の基質を作成した. この蛍光ペプチドを多量のペプチダーゼ阻害薬の存在下にラット組織抽出液と反応させ, ニトロ基の消失に伴う蛍光強度の増加で活性の測定を行った. 【結果と考察】蛍光強度は反応時間, 組織タンパク量に依存して増加した. 脾や肺と同様に, 中枢...

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Published in歯科基礎医学会雑誌 Vol. 41; no. 5; p. 495
Main Authors 大井康浩, 佐伯万騎男, 米原典史, 前田定秋, 上崎善規
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 歯科基礎医学会 30.08.1999
Japanese Association for Oral Biology
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ISSN0385-0137

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Summary:炎症反応時に産生されるペルオキシナイトライトはタンパク質のチロシン残基をニトロ化し, その生理機能を損なう. 一方, 酵素的な脱ニトロ化反応によりニトロ化タンパク質の機能を回復させる可能性を示唆した. 今回, 簡便かつ定量可能な酵素活性測定法を開発し, 組織分布を検討した. 【方法】ニトロチロシン含有ペプチドに蛍光基を結合させ, 脱ニトロ化酵素の基質を作成した. この蛍光ペプチドを多量のペプチダーゼ阻害薬の存在下にラット組織抽出液と反応させ, ニトロ基の消失に伴う蛍光強度の増加で活性の測定を行った. 【結果と考察】蛍光強度は反応時間, 組織タンパク量に依存して増加した. 脾や肺と同様に, 中枢神経系においても脱ニトロ化酵素活性が比較的強く認められた. さらに, この酵素は一部の臓器を除き, 主として細胞質内に局在していた. このような酵素の存在はニトロ化によるタンパク質の機能障害に対する防御機構の存在とともに, タンパク質のニトロ化反応がリン酸化制御機構と同様に, 細胞内情報伝達を担っている可能性が示唆された.
ISSN:0385-0137