CTスキャンによるアルツハイマー型痴呆の診断

アルツハイマー型痴呆 (AD) と診断された109名と非痴呆老人43名を対象に, computed tomography (CT) 上の脳萎縮と知的機能の低下, 痴呆の程度との関連について統計学的に解析し, その診断的意義を検討した. CT上の脳萎縮の評価は, CTの画像データより computer を用いて脳髄液腔面積比 (CSF%) を算出して行った. さらに, 脳実質部を占めるCTNoヒストグラムから半値幅を計測し, これらが脳表萎縮等を評価する諸量と考え, ADとの関連について検討を行った. 知的機能の評価には, 長谷川式簡易痴呆スケール (HDS), 痴呆の程度には, Hughes...

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Published in日本老年医学会雑誌 Vol. 20; no. 5; pp. 410 - 419
Main Author 今井, 幸充
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本老年医学会 01.09.1983
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ISSN0300-9173
DOI10.3143/geriatrics.20.410

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Summary:アルツハイマー型痴呆 (AD) と診断された109名と非痴呆老人43名を対象に, computed tomography (CT) 上の脳萎縮と知的機能の低下, 痴呆の程度との関連について統計学的に解析し, その診断的意義を検討した. CT上の脳萎縮の評価は, CTの画像データより computer を用いて脳髄液腔面積比 (CSF%) を算出して行った. さらに, 脳実質部を占めるCTNoヒストグラムから半値幅を計測し, これらが脳表萎縮等を評価する諸量と考え, ADとの関連について検討を行った. 知的機能の評価には, 長谷川式簡易痴呆スケール (HDS), 痴呆の程度には, Hughes らの Clinical Dementia Rating (CDR) を用いた. 結果から, 脳室レベルのスライスにおけるCSF%の増大は, 加齢による影響が加味されるが, AD自体の疾患による変化が大きいことが示唆された. CSF%と半値幅はHDS, CDR得点と有意な相関を認めた. 皮質レベルのスライスでは, 半値幅はCSF%に比べその相関は大きかった. 非痴呆群と痴呆群のCSF%および半値幅の平均値の比較では, 明らかな有意差が認められた. CDR得点に基づき, CSF%と半値幅の平均値を比較すると, 痴呆が高度になるに従いそれらの平均値の増加が示されたが, 各群間に明らかな有意差を認めないものもみられた. 判別分析, 重回帰分析からは, 皮質レベルのスライスの半値幅が痴呆を診断する上で有用であることが判明した. また, CSF%と半値幅を用いた非痴呆と痴呆の判別は, 的中率82.6%であった. 非痴呆と高度痴呆および, 軽度痴呆と高度痴呆の判別も的中率80%以上を示した. 以上より, ADのCT上の診断には, 脳室レベルでは, CSF%の増加, また皮質レベルでは半値幅が有用であることが考えられた.
ISSN:0300-9173
DOI:10.3143/geriatrics.20.410