ヒト間葉系幹細胞における構成型シクロオキシゲナーゼ(COX)2の発現とその役割

【目的】プロスタグランジン(PG)は, 構成型であるシクロオキシゲナーゼ(COX)-1及び誘導型であるCOX-2により合成され, 骨形成, 骨吸収の両方に働くことが知られている. 我々は骨髄から採取されたヒト間葉系幹細胞(hMSC)がCOX-1のみならずCOX-2も常時発現していることに注目し, COX代謝産物が骨芽細胞分化に及ぼす影響について検討したので報告する. 【方法】免疫蛍光染色法, RT-PCR法によりhMSCにおけるCOX-1, COX-2, PGE2合成酵素であるcytosolic PGES(cPGES), membrane-associated PGES(mPGES)の発現を検...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in歯科基礎医学会雑誌 Vol. 44; no. 5; p. 400
Main Authors 有川稔多加, 小村健, 森田育男
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 歯科基礎医学会 20.09.2002
Japanese Association for Oral Biology
Online AccessGet full text
ISSN0385-0137

Cover

More Information
Summary:【目的】プロスタグランジン(PG)は, 構成型であるシクロオキシゲナーゼ(COX)-1及び誘導型であるCOX-2により合成され, 骨形成, 骨吸収の両方に働くことが知られている. 我々は骨髄から採取されたヒト間葉系幹細胞(hMSC)がCOX-1のみならずCOX-2も常時発現していることに注目し, COX代謝産物が骨芽細胞分化に及ぼす影響について検討したので報告する. 【方法】免疫蛍光染色法, RT-PCR法によりhMSCにおけるCOX-1, COX-2, PGE2合成酵素であるcytosolic PGES(cPGES), membrane-associated PGES(mPGES)の発現を検討した. さらに血清やデキサメタゾン(DEX), 骨芽細胞分化誘導による発現の変動を検討した. EIA法を用いて培養上清中のPGE2量の測定も行った. COX-2阻害薬であるNS-398を添加し, RT-PCR法により骨芽細胞の分化マーカーの変動を検討した. 【結果】hMSCは未分化状態において無刺激下でもCOX-1, COX-2, cPGES, mPGESを発現し, PGE2を産生していたが, 骨芽細胞への分化に伴いmPGESの発現は低下し, PGE2産生量も減少した. COX-2の発現はDEXで抑制されなかった. hMSCは骨芽細胞の初期分化マーカーであるBMP-2を発現していたが, NS-398により発現の抑制が認められた. 一方, 後期分化マーカーであるオステオポンチン, オステオカルシンに対しての抑制は認められなかった. 【考察】hMSCは構成型COX-2を持ち, PGE2を産生することでオートクラインに初期分化を誘導していることが示唆された.
ISSN:0385-0137