ピロシーケンス法を用いた乳幼児腸内細菌叢モニタリングシステムの構築とプロバイオティクス投与の影響の解析
【目的】乳幼児腸内フローラは生後直後の無菌状態から劇的な変化を伴いながら成熟し, 成人型フローラに近づいていく. この腸内フローラの形成に関しては, 光岡らの研究を始め多くの研究がなされ種々知見が得られている. 近年では, 分子生物学的手法により培養を経ずに腸内細菌の16SrRNA遺伝子の分布を直接分析し, 細菌叢を詳細に解析することも可能となった. T-RFLPやDGGEなどはその一つで, すでに本分野の研究に多く活用されている. しかし, それらは実験が煩雑である上にデータが間接的であるという点において, 本分野の研究者を完全に満足させるものではない. そこで我々は, 近年開発されたピロシ...
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Published in | 腸内細菌学雑誌 Vol. 22; no. 2; p. 46 |
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Main Authors | , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本ビフィズス菌センター
01.04.2008
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ISSN | 1343-0882 |
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Summary: | 【目的】乳幼児腸内フローラは生後直後の無菌状態から劇的な変化を伴いながら成熟し, 成人型フローラに近づいていく. この腸内フローラの形成に関しては, 光岡らの研究を始め多くの研究がなされ種々知見が得られている. 近年では, 分子生物学的手法により培養を経ずに腸内細菌の16SrRNA遺伝子の分布を直接分析し, 細菌叢を詳細に解析することも可能となった. T-RFLPやDGGEなどはその一つで, すでに本分野の研究に多く活用されている. しかし, それらは実験が煩雑である上にデータが間接的であるという点において, 本分野の研究者を完全に満足させるものではない. そこで我々は, 近年開発されたピロシーケンス法(高速DNAシーケンス法)を導入し, より簡便に信頼度の高いデータが得られるフローラ解析システムを構築した. そして, プロバイオティクス投与が乳幼児腸内フローラ形成に与える影響のモニタリングを試みた. 【方法】熊本県小国町にて構築したコホートにて, 新生児7名(プラセボ5名)にBifidobavterium breve M-16V(凍結乾燥粉末1010cfu/day)を生後1週間後から3カ月間経口投与した. 糞便は投与開始時, 1ヶ月後, 3ヶ月後, 12ヶ月後にサンプリングした. 計48の糞便サンプルから細菌DNAをビーズ破砕法により抽出し, これを鋳型に16S rRNA遺伝子のV6領域約100bpをPCR増幅した. プライマーにはサンプル間の判別が後で可能になるように3baseからなる48種類の配列タグを付与し, サンプルごとに異なるタグのプライマーでPCRを行った. 反応後, それぞれの増幅産物を定量し, 同量ずつ混合しピロシーケンス反応に供した. 計約6万クローンをシーケンスした. 【結果】各サンプルにおいて約1000から1500クローンの配列データが得られた. 各配列をRibosomal Database Project IIにて検索し細菌分類学情報を得た. 生後3ヶ月時で投与群, プラセボ群いずれにおいても約20%から70%のクローンがビフィズス属に帰属されるビフィダスフローラが確認された. 1年時においては, プラセボ群においてより顕著なビフィズス属の占有率の減少とクロストリジア綱の占有率の増加傾向が観察された. 【考察】ピロシーケンス法と細菌16S rRNA遺伝子配列データベースを活用することにより簡便に精密な細菌叢データを得ることができた. またプロバイオティクスがフローラに与える包括的な影響を見ることができた. さらに綿密なデータ解析および大人数のフローラ解析を行うことで, プロバイオティクスのより詳細な影響を知ることができると期待される. |
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ISSN: | 1343-0882 |