高齢者における経皮内視鏡的胃瘻造設術による合併症予防のための追加処置の有用性に関する検討

近年, 経皮内視鏡的胃瘻造設術 (以下PEGと略す) はその手技の簡便性と安全性が確立され, 広く一般病院においても普及している. しかし高齢者においては, 痴呆に起因する胃瘻チューブ自体のトラブルや腸間膜の弛緩傾向による腸管誤穿刺などの合併症が稀ながら報告されている. 今回われわれは, これら高齢者に起こりやすいと思われる合併症の予防を目的に, 若干の追加処置を実施しその有用性を検討した. 対象は1995年9月から1999年5月までに, 当院にてPEGを施行した65歳以上の高齢者47例である. 合併症予防のため実施した追加処置は, 胃壁固定術, 術中のX線透視の併用による腸管の位置確認, さ...

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Published in日本老年医学会雑誌 Vol. 37; no. 8; pp. 613 - 618
Main Authors 矢野, 雅彦, 武井, 伸一, 鈴木, 健太, 小林, 勲, 中澤, 俊郎
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本老年医学会 25.08.2000
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ISSN0300-9173
DOI10.3143/geriatrics.37.613

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Summary:近年, 経皮内視鏡的胃瘻造設術 (以下PEGと略す) はその手技の簡便性と安全性が確立され, 広く一般病院においても普及している. しかし高齢者においては, 痴呆に起因する胃瘻チューブ自体のトラブルや腸間膜の弛緩傾向による腸管誤穿刺などの合併症が稀ながら報告されている. 今回われわれは, これら高齢者に起こりやすいと思われる合併症の予防を目的に, 若干の追加処置を実施しその有用性を検討した. 対象は1995年9月から1999年5月までに, 当院にてPEGを施行した65歳以上の高齢者47例である. 合併症予防のため実施した追加処置は, 胃壁固定術, 術中のX線透視の併用による腸管の位置確認, さらにバンパー埋没症候群や自己抜去など慢性期のチューブトラブル時に, ポリ塩化ビニル性の細径チューブや瘻孔突破に適したガイドワイヤーの使用による胃瘻の再造設などであった. また追加処置とは別に, Push 法において必要とされる2回目の内視鏡再挿入を省略し, その可否を検討した. その結果, 胃壁固定術は急性期に起きた胃瘻チューブの自己抜去例1例のみにおいて, 胃腹壁間の離開による腹膜炎の予防に有用であった. またX線透視の使用は, 腸管が穿刺点に重なった症例が1例もなく, その有用性は不明であった. 内視鏡の再挿入は, 省略してもバンパーの牽引不良による腹膜炎の合併はみられず, 今後も不要と考えられた. さらに慢性期におけるチューブトラブルにおいて, 細径チューブなどを併用して胃瘻の再造設する方法は, 既存の瘻孔を温存してもチューブの誤挿入や栄養剤の誤注入による腹膜炎の合併は認められず, 有用な方法と考えられた. ただしこれらの追加処置には, 手術時間の延長, 放射線被曝および医療コストの上昇などいくつかの問題点もあり, 適応となる症例を限定しその汎用には慎重になるべきとも考えられた.
ISSN:0300-9173
DOI:10.3143/geriatrics.37.613