骨髄細胞のオステオポンチン遺伝子発現に対するリン酸の効果
【目的】骨の石灰化では様々なタンパク質や酵素の経時的出現が知られている. その中で早期に出現するアルカリフォスファターゼ(ALP)は有機リン酸に作用し無機リン酸を遊離させる. だがリン酸の生理的機能については不明な点が多い. 近年骨芽細胞様細胞MC3T3-E1のオステオポンチン(OPN)遺伝子発現がリン酸により促進することが分かった. 本研究では骨髄細胞の骨芽細胞への分化過程でリン酸処理によりOPN発現がどのように変化するかを調べた. 【方法】ラット大腿骨より採取した骨髄細胞をコラーゲンゲルとともに1-3週間培養したのち48時間リン酸を作用させ細胞からRNAを抽出しOPNmRNA量をノーザンブ...
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Published in | 歯科基礎医学会雑誌 Vol. 43; no. 5; p. 579 |
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Main Authors | , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
歯科基礎医学会
20.08.2001
Japanese Association for Oral Biology |
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ISSN | 0385-0137 |
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Summary: | 【目的】骨の石灰化では様々なタンパク質や酵素の経時的出現が知られている. その中で早期に出現するアルカリフォスファターゼ(ALP)は有機リン酸に作用し無機リン酸を遊離させる. だがリン酸の生理的機能については不明な点が多い. 近年骨芽細胞様細胞MC3T3-E1のオステオポンチン(OPN)遺伝子発現がリン酸により促進することが分かった. 本研究では骨髄細胞の骨芽細胞への分化過程でリン酸処理によりOPN発現がどのように変化するかを調べた. 【方法】ラット大腿骨より採取した骨髄細胞をコラーゲンゲルとともに1-3週間培養したのち48時間リン酸を作用させ細胞からRNAを抽出しOPNmRNA量をノーザンブロット法にて測定した. 【結果】骨髄細胞をI型コラーゲンとともに培養すると骨芽細胞へ分化し, 約3週間後には石灰化結節を形成しOCN, BSP, OPN遺伝子発現が認められた. コラーゲンとともに10-14日培養した骨髄細胞にリン酸(5,10mM)を作用させるとOPN遺伝子発現は有意に促進された. しかし3週目の細胞ではリン酸の作用は著しく低下していた. 【結論】本研究から骨芽細胞へ分化する過程にある細胞ではリン酸がOPN遺伝子を促進することが明らかになった. OPNは細胞接着能を有し骨芽細胞の初期分化に関わることが報告されており, ALPにより生じるリン酸はミネラルの構成成分のみならず, OPN産生を制御することで骨芽細胞分化にも関わっている可能性がある. |
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ISSN: | 0385-0137 |