チタンと骨芽細胞の間に形成されるアンカー構造の解明とその応用

【目的】チタンと培養骨芽細胞株MC3T3-E1細胞との間に形成される構造を明らかにすることにより, チタンと骨組織との高い親和性の原因を解明することを目的とした. 更に, その構造を利用して生体融和材料の開発を試みた. 【材料と方法】(1)予備石灰化の後, MC3T3-E1細胞を5万個/mlとなるようにチタンプレート上に播種し, 1, 2週間培養した. (2)細胞を剥離後, チタン表面を定法に従い, 走査型電子顕微鏡にて観察した. (3)石灰化量とコラーゲンの形成量を測定し, RT-PCR法を用いてメッセンジャーRNAの発現を解析した. 【結果】細胞は上記の方法にてほぼ完全に剥離された. チタ...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in歯科基礎医学会雑誌 Vol. 43; no. 5; p. 537
Main Authors 山下菊冶, 中尾雅英, 森本景之, 市川哲雄, 北村清一郎
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 歯科基礎医学会 20.08.2001
Japanese Association for Oral Biology
Online AccessGet full text
ISSN0385-0137

Cover

More Information
Summary:【目的】チタンと培養骨芽細胞株MC3T3-E1細胞との間に形成される構造を明らかにすることにより, チタンと骨組織との高い親和性の原因を解明することを目的とした. 更に, その構造を利用して生体融和材料の開発を試みた. 【材料と方法】(1)予備石灰化の後, MC3T3-E1細胞を5万個/mlとなるようにチタンプレート上に播種し, 1, 2週間培養した. (2)細胞を剥離後, チタン表面を定法に従い, 走査型電子顕微鏡にて観察した. (3)石灰化量とコラーゲンの形成量を測定し, RT-PCR法を用いてメッセンジャーRNAの発現を解析した. 【結果】細胞は上記の方法にてほぼ完全に剥離された. チタン表層の観察では, 細胞培養1週目では, コラーゲン線維からなる細胞外マトリックスのネットワークが観察され, その先端はチタン表層に直接接していた. 更に, 培養2週後には全ての細胞外マトリックスは石灰化層に埋入された. また, RNAの解析から培養細胞は正常と同様の細胞外マトリックスを形成していることが明らかになった. 【結論】チタンと骨芽細胞との間には, 生体と同様の細胞外マトリックスが形成され, それを構成するコラーゲンの先端が石灰化層に埋め込まれたアンカー構造が形成された. この構造が, チタンの高い組織親和性の原因と考えられる. 更に, この構造を介して骨細胞外マトリックスを結合させた, 組織誘導能を持つ生体融和材料が開発可能であることが証明された.
ISSN:0385-0137