体外循環離脱後の止血困難に対するクリオプレシピテートの有用性について―小児心臓外科手術における希釈性凝固障害への対応

「要旨」:体外循環離脱後の止血困難な状態は, 術中大量出血時と同様に希釈性凝固障害をきたしていると考えられ, その本態はフィブリノーゲンの低下である. フィブリノーゲンは1次止血, 2次止血にかかわる重要な凝固因子であり, フィブリノーゲン低下状態では止血ができない. 低フィブリノーゲンによる止血不良の状況においてFFPの大量投与で対処が難しい場合に, フィブリノーゲン濃度を一気に血栓形成が可能なレベル(100mg/dL以上)まで引き上げて止血を図るためにはクリオプレシピテートが有効である. クリオプレシピテートの調整には専用の機器が必要という制約があるが, 体外循環終了後に止血不良が生じた時...

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Published in体外循環技術 Vol. 36; no. 2; pp. 101 - 107
Main Author 岩尾憲明
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本体外循環技術医学会 01.06.2009
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ISSN0912-2664

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Summary:「要旨」:体外循環離脱後の止血困難な状態は, 術中大量出血時と同様に希釈性凝固障害をきたしていると考えられ, その本態はフィブリノーゲンの低下である. フィブリノーゲンは1次止血, 2次止血にかかわる重要な凝固因子であり, フィブリノーゲン低下状態では止血ができない. 低フィブリノーゲンによる止血不良の状況においてFFPの大量投与で対処が難しい場合に, フィブリノーゲン濃度を一気に血栓形成が可能なレベル(100mg/dL以上)まで引き上げて止血を図るためにはクリオプレシピテートが有効である. クリオプレシピテートの調整には専用の機器が必要という制約があるが, 体外循環終了後に止血不良が生じた時にやみくもに輸血を行うのではなく, 止血機能検査を行い血小板数や凝固因子の低下の状況を評価した上で, 適切な輸血療法と凝固因子の補充を実施することで止血が可能になることを念頭に置く必要がある. 「はじめに」術中の大量出血に対して如何にして止血を図ればよいかというのは重要な問題であり, これは体外循環離脱後の止血困難な状況においても同様である.
ISSN:0912-2664