脳卒中患者の肺炎の検討
「目的」われわれはこれまで脳卒中リハビリテーション(以下, リハ)患者の肺炎発症を予測する因子として, 嚥下障害, 性差(男性), 脳萎縮・脳室拡大, 血清アルブミン低値を挙げ, 肺炎発症はリハの阻害因子となるばかりでなく, 入院中の死亡率も増加させることを報告した. 今回脳卒中後肺炎の部位, 検出された菌, 発症時期, 転帰について検討した. 「対象」1992年9月~1997年8月に当科に入退院した脳卒中患者438名(67.0±11.7歳). 「方法」(1)入院中の肺炎発症の有無, 転帰を調査し, さらに(2)肺炎発症患者については部位, 発症時期, 喀痰培養にて検出された菌種など肺炎発症や...
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Published in | リハビリテーション医学 Vol. 35; no. 12; p. 1045 |
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Main Authors | , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本リハビリテーション医学会
1998
社団法人日本リハビリテーション医学会 The Japanese Association of Rehabilitation Medicine |
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ISSN | 0034-351X |
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Summary: | 「目的」われわれはこれまで脳卒中リハビリテーション(以下, リハ)患者の肺炎発症を予測する因子として, 嚥下障害, 性差(男性), 脳萎縮・脳室拡大, 血清アルブミン低値を挙げ, 肺炎発症はリハの阻害因子となるばかりでなく, 入院中の死亡率も増加させることを報告した. 今回脳卒中後肺炎の部位, 検出された菌, 発症時期, 転帰について検討した. 「対象」1992年9月~1997年8月に当科に入退院した脳卒中患者438名(67.0±11.7歳). 「方法」(1)入院中の肺炎発症の有無, 転帰を調査し, さらに(2)肺炎発症患者については部位, 発症時期, 喀痰培養にて検出された菌種など肺炎発症や入院中死亡に関連する因子を検討した. 「結果」(1)438例中44例(10.0%, 71.1±11.3歳)に肺炎発症を認めた. うち11例(25.0%)が入院中に死亡した. (2)部位は右肺野22例, 左肺野10例, 両肺野12例であり左肺野に比し右肺野の発症が多かった. 転帰については, 右肺野の発症22例中2例(9.1%)が死亡したのに対し, 左肺野の発症10例中5例(50%)が死亡し, 左肺野の発症での死亡率が有意に高かった(χ^2 =6.73, p<0.01). 発症時期は冬13例, 春12例, 夏9例, 秋10例であった. 喀痰培養では, MRSA16件, 緑膿菌9件, 肺炎桿菌6件の順で多かった. また緑膿菌が検出された9例中6例(66.7%)が死亡した. 「結論」脳卒中後肺炎は院内感染, 日和見感染が主体と考えられる菌の検出が多い. 左肺野の発症は頻度は少ないが死亡率は高い. |
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ISSN: | 0034-351X |