歯の成熟に伴う象牙質リンタンパク質の分解機構

【緒言】象牙質ホスホホリン(Dentin phosphophoryn, PP)は, 象牙質特有の蛋白質であり, 象牙質の石灰化に重要な役割を果たすと考えられている. 歯の成熟に伴いPPが分解を受けること, また, 象牙質中にMatrix metalloproteinase 2(MMP-2)が存在することが, 既に示されている. 本研究では, PPのプロテアーゼに対する感受性を検討し, 歯の成熟に伴うPPの分解機構を考察した. 【材料と方法】ヒト第3大臼歯を歯冠と歯根に分割し, それぞれのEDTA抽出物を電気泳動後, ゲルを高感度染色法で分析した. また, ラット切歯よりPPを抽出し, ヒトリコ...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in歯科基礎医学会雑誌 Vol. 43; no. 5; p. 567
Main Authors 中島智和, 藤沢隆一, 久保木芳徳
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 歯科基礎医学会 20.08.2001
Japanese Association for Oral Biology
Online AccessGet full text
ISSN0385-0137

Cover

More Information
Summary:【緒言】象牙質ホスホホリン(Dentin phosphophoryn, PP)は, 象牙質特有の蛋白質であり, 象牙質の石灰化に重要な役割を果たすと考えられている. 歯の成熟に伴いPPが分解を受けること, また, 象牙質中にMatrix metalloproteinase 2(MMP-2)が存在することが, 既に示されている. 本研究では, PPのプロテアーゼに対する感受性を検討し, 歯の成熟に伴うPPの分解機構を考察した. 【材料と方法】ヒト第3大臼歯を歯冠と歯根に分割し, それぞれのEDTA抽出物を電気泳動後, ゲルを高感度染色法で分析した. また, ラット切歯よりPPを抽出し, ヒトリコンビナントMMP-2, トリプシンと37℃でインキュベートしたものと, PPのみを60℃でインキュベートしたものを同様に分析した. 【結果と考察】ヒト第3大臼歯のEDTA抽出物を比較すると, 歯冠の方が歯根より分子量分布が, 低分子量側ヘシフトしていた. これは, 歯冠の方が歯根より早く形成されるためであり, ヒト象牙質基質蛋白質が, in vivoで分解を受けることを示している. また, 酵素的分解のサンプルはMMP-2, トリプシンとも主要なバンドに変化は無くPPの分解は見られなかったが, 非酵素的分解のサンプルでは, PPの分解が見られた. PPはプロテアーゼに耐性を示し, PPの分解は非酵素的分解が中心であると思われた.
ISSN:0385-0137