国立療養所における肝炎ウイルス陽性例についての調査

高齢化とともに肝炎ウイルスの感染率は増加するが, とりわけC型肝炎ウイルスは, 各種悪性腫瘍の発症率が高く, 様々な肝外症状を来しやすいため注意を要する. 年々高齢化の進む医療の現場では, 肝炎ウイルス感染者に対する慎重な経過観察が要求されている. 対象と方法:国立療養所(A)における登録者の中の338名を対象とし, 血中のC型肝炎ウイルス抗体およびB型肝炎ウイルスの抗原および抗体(以下HCV, HBs-Ag, HBs-Ab)を検索した. これらの結果を, ほぼ同時期に施行された年次検診結果と比較し, 年齢分布, 治療歴, 生活形態等との関連を検討した. また国立療養所(B)にてHCV陽性が確...

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Published in日本ハンセン病学会雑誌 Vol. 68; no. 1; p. 63
Main Authors 並里まさ子, 寺井典子, 上司裕史, 小松彦太郎, 小川秀興
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本ハンセン病学会 15.03.1999
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ISSN1342-3681

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Summary:高齢化とともに肝炎ウイルスの感染率は増加するが, とりわけC型肝炎ウイルスは, 各種悪性腫瘍の発症率が高く, 様々な肝外症状を来しやすいため注意を要する. 年々高齢化の進む医療の現場では, 肝炎ウイルス感染者に対する慎重な経過観察が要求されている. 対象と方法:国立療養所(A)における登録者の中の338名を対象とし, 血中のC型肝炎ウイルス抗体およびB型肝炎ウイルスの抗原および抗体(以下HCV, HBs-Ag, HBs-Ab)を検索した. これらの結果を, ほぼ同時期に施行された年次検診結果と比較し, 年齢分布, 治療歴, 生活形態等との関連を検討した. また国立療養所(B)にてHCV陽性が確認されている約140例の中, HCV RNAの検索が可能であった約100例について, その陽性率と, 各種臨床データとの関連を検討した. 結果:国立療養所(A)ではHCV+が235例(69.5%)で, HBs-Abは218例(64.5%)に検出された. HBs-Ag+は5例で, 中3例はHBs-Ab-であり, さらにその中2例はHCV+であった. 血小板数(PLT);HCV+の中, 15×10 4(/μl)未満は108例(46.2%)で, 10×10 4未満は31例(13.2%)であった. HCV-の中, 15×10 4未満は23例(22.3%)で, 10×10 4未満は5例(4.9%)であった. AST;HCV+の中, 40<は57例(24.3%)で, 70<は30例(12.8%)であった. HCV-の中, 40<は5例(4.9%)で, 70<は0であった. ALT;HCV+の中, 40<は48例(20.4%)で, 70<は22例(9.4%)であった. HCV-の中, 40<は7例(6.8%)で, 70<は1例(1%)であった. 尿蛋白;HCV+の中, 陽性(1+以上)は13例(5.5%)で, HCV-の中では2例(2%)であった. 尿潜血反応;HCV+の中, 陽性(1+以上)は54例(23%)で, HCV-の中では19例(19%)であった. HBs-Ag+の5例;PLT15×10 4未満が1例, AST, ALTはいずれも40以下であった. 尿潜血+は2例に認めた. HCV+(両ウイルス感染)の2例中, 1例は尿蛋白, 尿潜血とも2+であった. これまでの調査で, ハンセン病の病型と, 両ウイルスの検出率およびプロミン使用歴の有無との相関は認められない. 国立療養所(B)では, これまでの調査でHCV+の中の約半数がHCV-RNA陽性であった. 同園では, 大風子油の使用歴とHCVの有無には相関がみられなかったが, プロミン使用歴のある群ではない群よりも, HCVの陽性率が有意に高かった. 考察:国立療養所(A)での調査より, HVC感染は, PLT, 肝機能に影響を及ぼす傾向が窺われた. また全般に, 尿蛋白+よりも尿潜血+の頻度がより高く, ハンセン病既往歴の関与が推察された. プロミン使用歴の有無とHCV感染率については, 2園で相違がみられた. さらに年齢分布, 各種検査データ等と比較検討の予定である.
ISSN:1342-3681