特異な肉眼所見を示した単純性潰瘍の1例
単純性潰瘍は非特異性腸潰瘍のうち,回盲部に打ち抜き様潰瘍が発生するものである.今回われわれは潰瘍が広範に多発し,漿膜下に瘻孔を形成した単純性潰瘍を経験したので報告する.症例は48歳,男性.食思不振,体重減少のため入院し,回盲部から横行結腸にかけ多発潰瘍がみられ,ここからの大量下血のため右半結腸切除術が施行された.摘出標本では, 10×5cmのUL-IV潰瘍を回盲弁上に認め,その他横行結腸~回腸末端部に潰瘍が多発し,また回腸末端と上行結腸間の漿膜下に瘻孔を認めた.病理組織像はCrohn病等の特徴的所見はなく,非特異的炎症像であった.回盲弁上に騎乗する潰瘍の存在から,本症例を単純性潰瘍と診断した....
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Published in | 日本臨床外科学会雑誌 Vol. 61; no. 8; pp. 2108 - 2111 |
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Main Authors | , , , , |
Format | Journal Article |
Language | English Japanese |
Published |
日本臨床外科学会
25.08.2000
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Subjects | |
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ISSN | 1345-2843 1882-5133 |
DOI | 10.3919/jjsa.61.2108 |
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Summary: | 単純性潰瘍は非特異性腸潰瘍のうち,回盲部に打ち抜き様潰瘍が発生するものである.今回われわれは潰瘍が広範に多発し,漿膜下に瘻孔を形成した単純性潰瘍を経験したので報告する.症例は48歳,男性.食思不振,体重減少のため入院し,回盲部から横行結腸にかけ多発潰瘍がみられ,ここからの大量下血のため右半結腸切除術が施行された.摘出標本では, 10×5cmのUL-IV潰瘍を回盲弁上に認め,その他横行結腸~回腸末端部に潰瘍が多発し,また回腸末端と上行結腸間の漿膜下に瘻孔を認めた.病理組織像はCrohn病等の特徴的所見はなく,非特異的炎症像であった.回盲弁上に騎乗する潰瘍の存在から,本症例を単純性潰瘍と診断した.本疾患の術後再発率は約20%と高く,保存的治療も行われているが,経過中,大量出血,腸穿孔の危険もあり注意を要する.早期発見されれば,再発例も保存的治療が奏効するといわれ,術後,定期的な腸管の精査が必要である. |
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ISSN: | 1345-2843 1882-5133 |
DOI: | 10.3919/jjsa.61.2108 |