熊本地震における子どもの心のケア - 被災した子どもの診療経験と医療・教育・母子保健領域における支援活動

熊本地震における, 被災した子どもの診療経験, および医療・教育・母子保健領域における支援活動から, 子どもの心のケアの概要や経過についてまとめた. 筆者らの診療経験として, 避難所生活の適応に苦慮した発達障害児例や, 心的外傷後ストレス障害と診断した児童例を報告した. 特別な医療ニーズのある, 強度行動障害をもつ入院患者への対応には困難を伴った. 医療領域では, 急性期には災害派遣精神医療チーム(Disaster Psychiatric Assistance Team,以下DPAT)の協力を得た. 子どもの示す症状としては, 急性期は急性ストレス反応が多かったが, 中長期には不登校などの適応...

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Published in児童青年精神医学とその近接領域 Vol. 63; no. 5; pp. 715 - 727
Main Authors 田中恭子, 松尾由美, 大平洋明, 城野匡
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本児童青年精神医学会 01.11.2022
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ISSN0289-0968

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Summary:熊本地震における, 被災した子どもの診療経験, および医療・教育・母子保健領域における支援活動から, 子どもの心のケアの概要や経過についてまとめた. 筆者らの診療経験として, 避難所生活の適応に苦慮した発達障害児例や, 心的外傷後ストレス障害と診断した児童例を報告した. 特別な医療ニーズのある, 強度行動障害をもつ入院患者への対応には困難を伴った. 医療領域では, 急性期には災害派遣精神医療チーム(Disaster Psychiatric Assistance Team,以下DPAT)の協力を得た. 子どもの示す症状としては, 急性期は急性ストレス反応が多かったが, 中長期には不登校などの適応に関する問題が増えた. 教育領域では, スクールカウンセラーの重点配置や心のサポート授業などが行われた. 被害の大きかった地域では, 心のケアを必要とする子どもの数は減少傾向だが他地域よりも依然として多い. 母子保健領域では, 幼児健診でこころとからだの問診票を用いた支援が行われた. 児童精神科医による医療相談では, 対象児だけでなく家族の相談も寄せられ, 保護者支援の重要性が認識された. 支援体制に関しては, DPATや教育・母子保健領域との連携, 情報の共有や管理についての課題が浮き彫りになった. 多くの子どもが時間とともに回復する中, 経過が遷延するなどの異なる反応を示す子どももおり, 一人一人の経過に応じた個別の支援が必要である. 熊本地震の経験から学び, これから起こりうる災害に対して備えておくことが重要である.
ISSN:0289-0968