膵病変を合併したと思われる肺結核の1例
「要旨」: 52歳, 女性. 心窩部痛と体重減少を主訴に受診. 腹部造影CTにて膵体部に腫瘤を認め, 膵臓の悪性腫瘍が疑われた. EUS-FNAを3回施行したが診断に至らず, 膵体尾部切除術を施行, 病理組織診断にて壊死を伴う類上皮細胞肉芽腫を認めた. Ziehl-Neelsen染色で抗酸菌は証明されず, 結核やサルコイドーシスが鑑別として考えられたが, 腫瘤は完全に切除され, 症状も改善していたため, 経過観察となっていた. 約4ヵ月後, 膵性糖尿病に対してインスリン導入のため入院となった際に湿性咳嗽, 発熱が出現. CTで両肺上葉に微細結節の集簇を認めた. 気管支鏡検査を施行し, 気管支洗...
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Published in | 結核 Vol. 91; no. 9; pp. 617 - 622 |
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Main Authors | , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本結核病学会
15.09.2016
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ISSN | 0022-9776 |
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Summary: | 「要旨」: 52歳, 女性. 心窩部痛と体重減少を主訴に受診. 腹部造影CTにて膵体部に腫瘤を認め, 膵臓の悪性腫瘍が疑われた. EUS-FNAを3回施行したが診断に至らず, 膵体尾部切除術を施行, 病理組織診断にて壊死を伴う類上皮細胞肉芽腫を認めた. Ziehl-Neelsen染色で抗酸菌は証明されず, 結核やサルコイドーシスが鑑別として考えられたが, 腫瘤は完全に切除され, 症状も改善していたため, 経過観察となっていた. 約4ヵ月後, 膵性糖尿病に対してインスリン導入のため入院となった際に湿性咳嗽, 発熱が出現. CTで両肺上葉に微細結節の集簇を認めた. 気管支鏡検査を施行し, 気管支洗浄液培養から結核菌陽性となった. 抗結核薬4剤の治療を開始し, 症状と画像所見の改善を認めた. 初回検査時に診断が得られなかったが, 後に肺結核の存在が判明したことにより, 膵臓の病変は膵結核であったと考えられた. 膵結核は稀な疾患であり, 臨床所見や画像から診断することが困難であるため, 病理学的, 細菌学的確証が重要である. まず結核の可能性を疑って正確な診断アプローチを行うことが必要であり, それによって不要な外科的切除を避けることができる. |
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ISSN: | 0022-9776 |