児童青年期の強迫症と曝露反応妨害

強迫症/性障害に対する認知行動療法の有効性は小児・成人を問わず実証されている. 認知行動療法はさまざまな技法の集大成であり, 実際の治療ではそれらが組み合わせて使われる. 強迫症に対して用いる場合も同様であるが, 中でも鍵となる技法は曝露反応妨害である. 一方, 実際の臨床では曝露反応妨害はあまり使われていない方法であり, 専門機関や研修を受ける機会も少ない. エビデンスをもつ治療法をどうやって普及させるかが今日の課題である. 本論文では最初に強迫症に対する認知行動療法のエビデンスをまとめ, 次に曝露反応妨害について解説した. 最後に既存のマニュアル本を使いながら治療した第二著者による自験例を...

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Published in児童青年精神医学とその近接領域 Vol. 62; no. 1; pp. 11 - 20
Main Authors 原井宏明, 井上祐紀
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本児童青年精神医学会 01.02.2021
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ISSN0289-0968

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Summary:強迫症/性障害に対する認知行動療法の有効性は小児・成人を問わず実証されている. 認知行動療法はさまざまな技法の集大成であり, 実際の治療ではそれらが組み合わせて使われる. 強迫症に対して用いる場合も同様であるが, 中でも鍵となる技法は曝露反応妨害である. 一方, 実際の臨床では曝露反応妨害はあまり使われていない方法であり, 専門機関や研修を受ける機会も少ない. エビデンスをもつ治療法をどうやって普及させるかが今日の課題である. 本論文では最初に強迫症に対する認知行動療法のエビデンスをまとめ, 次に曝露反応妨害について解説した. 最後に既存のマニュアル本を使いながら治療した第二著者による自験例を紹介する. 個人スーパービジョンなしで, また転居に伴う悪化ものりこえた著効例である. 認知行動療法の強みの一つは治療者にとって便利なマニュアルがあり, 精神分析における教育分析のような長年にわたる指導を受けなくてもある程度の結果を出せることである. 一方, マニュアルに従うことによる欠点もある. 認知行動療法の敷居の低さによる問題点も最後に取り上げた.
ISSN:0289-0968