抗老化タンパク質を制御する食品成分に関する研究 (令和6年度日本栄養・食糧学会奨励賞受賞)

「要旨」: これまでに健康長寿に関するタンパク質は複数報告されているが, これらは性ホルモンの影響を受けるため, 雌雄での増減が異なり, 詳細な解析が困難であった. そこで筆者は, 性ホルモン非依存的に加齢とともに発現量が減少するタンパク質Senescence Marker Protein 30(SMP30)に着目し, この発現を制御する食品成分の探索を行ってきた. その結果, SMP30発現を増加させる非栄養素成分として, エピガロカテキンガレート(EGCG)およびレスベラトロール(RSV))を同定し, またビタミンC合成能が欠如したODSラットにおいて, 肝障害に伴いSMP30が肝臓から血...

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Published in日本栄養・食糧学会誌 Vol. 77; no. 6; pp. 407 - 413
Main Author 井上博文
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本栄養・食糧学会 10.12.2024
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ISSN0287-3516

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Summary:「要旨」: これまでに健康長寿に関するタンパク質は複数報告されているが, これらは性ホルモンの影響を受けるため, 雌雄での増減が異なり, 詳細な解析が困難であった. そこで筆者は, 性ホルモン非依存的に加齢とともに発現量が減少するタンパク質Senescence Marker Protein 30(SMP30)に着目し, この発現を制御する食品成分の探索を行ってきた. その結果, SMP30発現を増加させる非栄養素成分として, エピガロカテキンガレート(EGCG)およびレスベラトロール(RSV))を同定し, またビタミンC合成能が欠如したODSラットにおいて, 肝障害に伴いSMP30が肝臓から血清エクソソーム内に分泌されることを明らかにした. これは, 体内ビタミンC量の低下に伴う炎症によりSMP30が血清エクソソーム内へ移行する新たな制御機構であると推察された. 以上, SMP30を指標とした抗老化研究の推進は, 「健康寿命の延伸」を目指す上で効果的な戦略の一つとなるため, 現在の老化度合を数値として表すバイオマーカーとしてSMP30を応用する侵襲・非侵襲的な評価手法の確立を目指していきたい.
ISSN:0287-3516