『緒方洪庵の薬箱 (大阪大所蔵) 』研究 : 土茯の基原と実地臨床

「1. 緒論」緒方洪庵(以下, 洪庵, 1810~1863年)は江戸・幕末期に蘭学者・蘭方医として多くの功績を遺した. 大阪大学では, 約5,000件におよぶ適塾関連資料とともに, 洪庵が壮年期・晩年期にそれぞれ使用した2つの薬箱を所蔵している. このうち, 壮年期の洪庵が往診に携行したとされる薬箱(以下, 薬箱)は, 寄贈されるまで洪庵6男の4代目にあたる緒方裁吉氏が保管されていたものである. 内部には薬袋に入った丸剤や生薬等が遺されていたが, 我々はこれまで適塾記念会資料委員会およびその機能を引き継いだ適塾記念センター資料部会の承認を得て薬箱の調査を行ってきた. 薬箱は5段の引出からなり,...

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Published in薬史学雑誌 Vol. 55; no. 1; pp. 29 - 37
Main Authors 木村康人, 高橋京子, 高浦島田佳代子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本薬史学会 30.06.2020
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ISSN0285-2314

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Summary:「1. 緒論」緒方洪庵(以下, 洪庵, 1810~1863年)は江戸・幕末期に蘭学者・蘭方医として多くの功績を遺した. 大阪大学では, 約5,000件におよぶ適塾関連資料とともに, 洪庵が壮年期・晩年期にそれぞれ使用した2つの薬箱を所蔵している. このうち, 壮年期の洪庵が往診に携行したとされる薬箱(以下, 薬箱)は, 寄贈されるまで洪庵6男の4代目にあたる緒方裁吉氏が保管されていたものである. 内部には薬袋に入った丸剤や生薬等が遺されていたが, 我々はこれまで適塾記念会資料委員会およびその機能を引き継いだ適塾記念センター資料部会の承認を得て薬箱の調査を行ってきた. 薬箱は5段の引出からなり, 2段目には10種の丸剤名が記された薬袋(うち7袋に内容物残存)が, 3~5段目には59種の薬名が記された計60袋の薬袋がそれぞれ遺されていた.
ISSN:0285-2314