骨盤死腔炎治療中に発症したメトロニダゾール脳症の1例

メトロニダゾールは嫌気性菌に有効な抗菌薬であり, 注射剤の登場で腹腔内感染症を伴う患者など消化器領域で使用される場面が増えている. メトロニダゾールの副作用として中枢神経障害があり, メトロニダゾール脳症として知られている. 症例は68歳男性. X年3月前医で直腸癌に対して腹腔鏡下腹会陰式直腸切断術を施行した. 術後, 骨盤死腔炎, 会陰創感染に対してメトロニダゾールの内服が開始され内服継続のまま退院となった. X年5月, 術後化学療法のため自宅近くの当院に紹介となった. X+1年2月, 構音障害が出現し頭部MRIを撮影したところFLAIR像で左右対称性に小脳歯状核に高信号域を認めた. 内服歴...

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Published in日本農村医学会雑誌 Vol. 73; no. 4; pp. 390 - 396
Main Authors 叶多諒, 仲野宏, 鈴木博也, 林下宗平, 佐久間芽衣, 金澤匡司
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本農村医学会 30.11.2024
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ISSN0468-2513

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Summary:メトロニダゾールは嫌気性菌に有効な抗菌薬であり, 注射剤の登場で腹腔内感染症を伴う患者など消化器領域で使用される場面が増えている. メトロニダゾールの副作用として中枢神経障害があり, メトロニダゾール脳症として知られている. 症例は68歳男性. X年3月前医で直腸癌に対して腹腔鏡下腹会陰式直腸切断術を施行した. 術後, 骨盤死腔炎, 会陰創感染に対してメトロニダゾールの内服が開始され内服継続のまま退院となった. X年5月, 術後化学療法のため自宅近くの当院に紹介となった. X+1年2月, 構音障害が出現し頭部MRIを撮影したところFLAIR像で左右対称性に小脳歯状核に高信号域を認めた. 内服歴とMRIの所見からメトロニダゾール脳症が疑われ, メトロニダゾールを中止したところ3日程度で症状は改善したので臨床経過よりメトロニダゾール脳症と診断した. メトロニダゾールの使用に際しては, 投与量, 投与期間に留意し, 副作用の早期発見に努めるべきである.
ISSN:0468-2513