診断に難渋し外科的腹膜生検により診断した肺結核・結核性腹膜炎の1例

「要旨」 : 56歳男性が咳嗽と発熱を主訴に前医を受診した. CTスキャンでは左胸水と腹膜の肥厚, 腹腔リンパ節腫大を認めた. 胸水中のADAは上昇していたが, T-SPOT陰性であった. さらに, 喀痰検査で塗抹およびTB-PCRとも陰性であったが, 培養でMycobacterium gordonaeが陽性であった. 局所麻酔下胸腔鏡検査では, 壁側胸膜全体に軽度発赤を認めた. PET-CT検査では腸管にびまん性にFDG集積を認め, 悪性腫瘍に伴う腹膜播種を疑われた. 全身麻酔下で腹腔鏡下腹膜生検を試みたが, 癒着が強く開腹術を要した. 腹膜生検検体でTB-PCR陽性, 病理組織から乾酪壊死...

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Published in結核 Vol. 94; no. 2; pp. 45 - 50
Main Authors 荒木太亮, 岩波直弥, 濱峰幸, 牛木淳人, 山崎善隆
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本結核病学会 15.02.2019
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ISSN0022-9776

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Summary:「要旨」 : 56歳男性が咳嗽と発熱を主訴に前医を受診した. CTスキャンでは左胸水と腹膜の肥厚, 腹腔リンパ節腫大を認めた. 胸水中のADAは上昇していたが, T-SPOT陰性であった. さらに, 喀痰検査で塗抹およびTB-PCRとも陰性であったが, 培養でMycobacterium gordonaeが陽性であった. 局所麻酔下胸腔鏡検査では, 壁側胸膜全体に軽度発赤を認めた. PET-CT検査では腸管にびまん性にFDG集積を認め, 悪性腫瘍に伴う腹膜播種を疑われた. 全身麻酔下で腹腔鏡下腹膜生検を試みたが, 癒着が強く開腹術を要した. 腹膜生検検体でTB-PCR陽性, 病理組織から乾酪壊死を伴う肉芽腫を認めた. 喀痰検査再検したところ塗抹±と判明し, 当院結核病棟へ転院した. 抗結核治療を開始したところ, 5日後に癒着性イレウスを発症し, 1カ月間におよぶ絶食, 中心静脈栄養により保存的に軽快した. 本例では結核感染の確証が得られず診断に難渋し重篤な合併症を生じた. 原因不明の胸膜炎, 腹膜炎の鑑別において本症を考慮することは重要である.
ISSN:0022-9776