乳酸の新たな役割に光を当てるLACCO (ラッコ) シリーズの開発

「1. はじめに」学生時代, 部活動やサークルなどで運動をされたことのある方で「今日は乳酸が溜まったなあ」と呟いたことはないだろうか. 実は筋肉疲労に伴う乳酸の蓄積は19世紀から知られており, 以来乳酸はどちらかというとネガティブな印象がついてまわる分子であった. しかし, 近年この乳酸が脳内の神経細胞でエネルギー源として利用されているのではないかという説が提唱され, 乳酸の役割が見直されつつある. さらに, 健常細胞よりも乳酸を多く産生するがん細胞は産生した乳酸を周辺環境へ放出することで免疫反応を制御していることもわかってきた. また興味深いことに, 乳酸がヒストンを修飾することでエピジェネ...

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Published in生物物理 Vol. 64; no. 3; pp. 155 - 165
Main Author 那須雄介
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本生物物理学会 01.06.2024
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ISSN0582-4052

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Summary:「1. はじめに」学生時代, 部活動やサークルなどで運動をされたことのある方で「今日は乳酸が溜まったなあ」と呟いたことはないだろうか. 実は筋肉疲労に伴う乳酸の蓄積は19世紀から知られており, 以来乳酸はどちらかというとネガティブな印象がついてまわる分子であった. しかし, 近年この乳酸が脳内の神経細胞でエネルギー源として利用されているのではないかという説が提唱され, 乳酸の役割が見直されつつある. さらに, 健常細胞よりも乳酸を多く産生するがん細胞は産生した乳酸を周辺環境へ放出することで免疫反応を制御していることもわかってきた. また興味深いことに, 乳酸がヒストンを修飾することでエピジェネティックな遺伝子制御を行う. そのため, 乳酸を生体内で非侵襲的に観察することで乳酸の新たな役割に迫ろうという機運が神経科学やがん生物学, 免疫学, エピジェネティクスといった幅広い分野で高まっている.
ISSN:0582-4052