腹腔鏡手術にて摘出しえた大網嚢腫の1例

今回われわれは腹腔鏡により摘出しえた大網嚢腫の1例を経験したので報告する. 症例は44歳の女性で, 上部消化管造影にて胃大轡の圧排像を認めたため, 精査目的にて当院受診となった. 腹部超音波検査で多房性の嚢胞性腫瘤を認め, 腹部CTにて漿液性の内容物を有する大網嚢腫と診断した. 腹部血管造影にて右胃大網動脈より分枝する栄養血管を同定した後, 腹腔鏡下にて摘出術を施行した. 嚢腫の茎は細く, また周囲組織との癒着も認められず比較的容易に摘出可能であった. 嚢腫は病理組織学的に嚢腫性リンパ管腫であった. 大網嚢腫のうち,(1) 無症状の漿液性嚢腫で,(2) 術前検査にて栄養血管・嚢腫茎・周囲臓器と...

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Published in日本消化器外科学会雑誌 Vol. 29; no. 5; pp. 1069 - 1073
Main Authors 野口, 芳一, 今田, 敏夫, 利野, 靖, 牧野, 達郎, 松本, 昭彦, 福澤, 邦康, 石和, 直樹
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本消化器外科学会 01.05.1996
一般社団法人日本消化器外科学会
The Japanese Society of Gastroenterological Surgery
Subjects
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ISSN0386-9768
1348-9372
DOI10.5833/jjgs.29.1069

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Summary:今回われわれは腹腔鏡により摘出しえた大網嚢腫の1例を経験したので報告する. 症例は44歳の女性で, 上部消化管造影にて胃大轡の圧排像を認めたため, 精査目的にて当院受診となった. 腹部超音波検査で多房性の嚢胞性腫瘤を認め, 腹部CTにて漿液性の内容物を有する大網嚢腫と診断した. 腹部血管造影にて右胃大網動脈より分枝する栄養血管を同定した後, 腹腔鏡下にて摘出術を施行した. 嚢腫の茎は細く, また周囲組織との癒着も認められず比較的容易に摘出可能であった. 嚢腫は病理組織学的に嚢腫性リンパ管腫であった. 大網嚢腫のうち,(1) 無症状の漿液性嚢腫で,(2) 術前検査にて栄養血管・嚢腫茎・周囲臓器との位置関係が十分に同定可能な症例が腹腔鏡下手術の良い適応である. また, 確定診断が困難な症例においても腹腔鏡は治療方針決定に有用な検査であり, 積極的に施行すべきと考えられた.
ISSN:0386-9768
1348-9372
DOI:10.5833/jjgs.29.1069