本邦における人獣共通オンコセルカ症 : その起因種と媒介ブユ種
「はじめに」ブユはハエ目に属し, 雌成虫が吸血するため, 人や家畜に被害をもたらす重要な衛生昆虫として知られている. ブユの生活史は, 卵, 幼虫, 蛹, 成虫の4期からなり, 成虫以外は汚染されていない大小様々な流水系に生息する. ブユの分布は, 幼虫, 蛹の発育に適した河川を有する環境であれば, 世界の熱帯地域から寒帯地域まで, また低地から高地まで広くみられる. ブユの吸血が人とその営みに与える影響は地域によって異なるが, 観光業の低下, 家畜の死, 原虫や糸状虫などの媒介による人や家畜への病気の感染などが報告されている(Adler et al. 2004). ブユの人への影響で最も知ら...
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Published in | Medical Entomology and Zoology Vol. 66; no. 2; pp. 23 - 30 |
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Main Author | |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本衛生動物学会
25.06.2015
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ISSN | 0424-7086 |
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Summary: | 「はじめに」ブユはハエ目に属し, 雌成虫が吸血するため, 人や家畜に被害をもたらす重要な衛生昆虫として知られている. ブユの生活史は, 卵, 幼虫, 蛹, 成虫の4期からなり, 成虫以外は汚染されていない大小様々な流水系に生息する. ブユの分布は, 幼虫, 蛹の発育に適した河川を有する環境であれば, 世界の熱帯地域から寒帯地域まで, また低地から高地まで広くみられる. ブユの吸血が人とその営みに与える影響は地域によって異なるが, 観光業の低下, 家畜の死, 原虫や糸状虫などの媒介による人や家畜への病気の感染などが報告されている(Adler et al. 2004). ブユの人への影響で最も知られているのは, アフリカや中南米に分布し, 糸状虫の一種であるヒト回旋糸状虫Onchocerca volvulus(Leukart)を起因種とする人オンコセルカ症human onchocerciasis(アフリカの流行地では, 河川盲目症river blindnessとも呼ばれる)で, 世界保健機関などによる防圧計画が西アフリカのボルタ河流域で開始された1970年代のはじめには約1,800万人の感染者がいると推定され, 流行地域の住民にとっては健康上だけでなく社会経済的にも大きな負担となっていた(Crosskey 1990). |
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ISSN: | 0424-7086 |