急性膵炎に伴う膵仮性嚢胞手術症例の検討

目的: 急性膵炎に伴って生じた膵仮性嚢胞を分類し, 手術適応と予後について検討した. 対象と方法: 当院における過去15年間の急性膵炎に伴う膵仮性嚢胞症例38例を手術施行例と非施行例に分類し, その経過と仮性嚢胞の性状, 手術適応と術式, 予後を検討した. 結果: 保存的治療に抵抗し手術を要した症例は全体で21例 (55%) あった. 手術を要した症例は保存的症例に比べ, 膵仮性嚢胞が単房性のもの, 膵尾部のもの, 膵管との交通があるもの, 嚢胞最大径の大きいものにそれぞれ多く見られた (統計上の有意差はなかった). 手術は切除術13例 (膵体尾部切除11例, 膵頭十二指腸切除2例), 嚢胞消...

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Published in日本消化器外科学会雑誌 Vol. 36; no. 3; pp. 179 - 185
Main Authors 柳橋, 健, 岡田, 憲幸, 小西, 豊, 正井, 良和, 橋本, 隆, 梶原, 建熈, 和田, 道彦, 宮原, 勅治, 今井, 史郎
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本消化器外科学会 01.03.2003
一般社団法人日本消化器外科学会
The Japanese Society of Gastroenterological Surgery
Subjects
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ISSN0386-9768
1348-9372
DOI10.5833/jjgs.36.179

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Summary:目的: 急性膵炎に伴って生じた膵仮性嚢胞を分類し, 手術適応と予後について検討した. 対象と方法: 当院における過去15年間の急性膵炎に伴う膵仮性嚢胞症例38例を手術施行例と非施行例に分類し, その経過と仮性嚢胞の性状, 手術適応と術式, 予後を検討した. 結果: 保存的治療に抵抗し手術を要した症例は全体で21例 (55%) あった. 手術を要した症例は保存的症例に比べ, 膵仮性嚢胞が単房性のもの, 膵尾部のもの, 膵管との交通があるもの, 嚢胞最大径の大きいものにそれぞれ多く見られた (統計上の有意差はなかった). 手術は切除術13例 (膵体尾部切除11例, 膵頭十二指腸切除2例), 嚢胞消化管吻合4例, 開腹ドレナージ4例であった. 開腹術の適応は次の4種類に分類できた.(1) 難治性で腹部症状が軽快しないもの11例, (2) 膿瘍化したもの4例, (3) 嚢胞から出血の見られたもの3例, (4) 腫瘍性病変の疑われたもの3例であった. 出血の2例, 感染の1例に対し緊急手術が施行された. 全手術症例とも1度軽快退院したが, 8例が膵炎で再入院し3例に仮性嚢胞の再発がみられた. 結語: 膵仮性嚢胞の最大径が大きく難治性のもので膵炎の入院を繰り返している症例は手術適応を考慮しながら治療する. 嚢胞内出血や感染, 膿瘍を生じたときは緊急手術適応となりうる. 手術だけでは膵炎の再燃する症例もあり, 嚢胞に対する治療とともに膵炎に対する治療が大切と考えられた.
ISSN:0386-9768
1348-9372
DOI:10.5833/jjgs.36.179