子育て世代包括支援における助産師活動の実態と課題 他職種との連携・協働に焦点を当てて

(緒言) 「妊娠期から子育て期にわたる切れ目のない支援」の実現をめざし,子育て世代包括支援における多職種の連携システムが構築されつつある.助産師は,地域における母子保健に長年従事してきた実績を持ち,子育て世代包括支援を担う専門職のひとつと位置付けられている.しかし,新たな連携システムの中でどのような活動をしているのか,まだ解明されていない. 本研究の目的は,子育て世代包括支援に参画している助産師支援活動の実態,特に子育て世代包括支援を担う他の専門職との連携・協働の実態を把握し,子育て世代包括支援充実のための課題を明らかにすることである.(研究方法) 研究対象は,周産期領域における助産師実務経験...

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Published in千葉県立保健医療大学紀要 Vol. 16; no. 1; p. 1_157
Main Authors 川城, 由紀子, 川村, 紀子, 北川, 良子, 石井, 邦子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 千葉県立保健医療大学 31.03.2025
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ISSN1884-9326
2433-5533
DOI10.24624/cpu.16.1_1_157

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Summary:(緒言) 「妊娠期から子育て期にわたる切れ目のない支援」の実現をめざし,子育て世代包括支援における多職種の連携システムが構築されつつある.助産師は,地域における母子保健に長年従事してきた実績を持ち,子育て世代包括支援を担う専門職のひとつと位置付けられている.しかし,新たな連携システムの中でどのような活動をしているのか,まだ解明されていない. 本研究の目的は,子育て世代包括支援に参画している助産師支援活動の実態,特に子育て世代包括支援を担う他の専門職との連携・協働の実態を把握し,子育て世代包括支援充実のための課題を明らかにすることである.(研究方法) 研究対象は,周産期領域における助産師実務経験3年以上と,子育て世代包括支援経験1年以上を有し,研究協力に同意した助産師であった. 半構成的面接法により,基礎的情報と子育て世代包括支援の実際(担当事業,事業の対象者,支援の内容,他職種との連携・役割分担の有無と内容),子育て世代包括支援全般や他職種との連携・協働に関する考えを聴取した.子育て世代包括支援に関する語りを抽出し,意味内容を損なわないように要約してコードとし,事業毎に,類似性や異質性に基づきカテゴリー化した.(結果) 研究対象者は助産師8名であった.実務経験年数は平均11.4±8.6年,所属機関は保健センター6名,産後ケア施設1名,病院1名であった. 子育て世代包括支援の実際は,274のコードが抽出され,7の事業毎に支援内容と他職種との連携・役割分担に区別し,94のサブカテゴリー,41のカテゴリーに集約された.7の事業は,妊娠届出時の面接,妊娠中の個別支援,母親学級・両親学級,新生児訪問,産後の個別支援,産後ケア,事業全般であった.主なカテゴリーは,助産師が行う支援内容では,【リスクの査定を行う】【支援が必要な妊婦を抽出する】【妊婦のニーズに合わせて支援する】【母子のニーズに合わせて支援する】【母乳育児支援を行う】【母親の頑張りをねぎらう】等であり,他職種との連携・役割分担では,【保健師から依頼された支援を実施する】【他職種から依頼を受けて特定妊婦を支援する】【保健師と一緒に支援する】【他施設・他部署の担当者と情報共有して支援する】【助産師のみで対応できない支援を他職種に報告・依頼する】【母子に必要な専門的支援へつなぐ】等であった. 子育て世代包括支援に関する考えは,108のコードが抽出され,18のサブカテゴリー,5のカテゴリーに集約された.カテゴリーは,【助産師の専門性を活かした協働ができている】【助産師の専門性を向上させたい】【助産師による支援が増える仕組みを望む】【他職種・他機関との連携充実を望む】【産後ケアを充実させたい】であった.(考察) 助産師は,妊娠初期から産後の子育て期において,対象者のリスクを査定し,より支援が必要とされる母子を抽出した上で,個別のニーズに則した支援を行っていた.産後の支援では,母乳育児支援を行いながら母親の頑張りをねぎらい,対象者の身近な存在となり育児を支えていると考える.他職種との連携・役割分担において,保健師や他職種から助産師のケアを依頼され,また他職種と共有しながら共に支援を行っていた.そして,助産師だけで対応できない場合やハイリスクケースを必要時専門的支援へつなげ,他職種との連携を図っていた.互いの職種の専門性を理解し,密に情報共有・意見交換するなど,協力し合いながら対象者のニーズに合わせた支援の充実を図ることが重要といえる. 助産師は子育て世代包括支援や他職種との連携・協働を実践する中,助産師の専門性を活かし他の専門職と協働できていると考えていた.一方で,助産師の専門性の向上や助産師による支援の増大,他職種・他機関との連携の充実等が課題としてあげられた.そのため,子育て世代包括支援において助産師の専門的支援が必要とされる対象と支援内容,他職種との連携の充実を図るために解決すべき課題を明確にすることが今後の課題である.(倫理規定) 本研究は,千葉県立保健医療大学研究倫理審査委員会にて承認を受け実施した(2023-21).
ISSN:1884-9326
2433-5533
DOI:10.24624/cpu.16.1_1_157