書字行動の異常を呈した2症例
書字行動の異常を呈した2症例を提示し, 各症例の書字障害の機序を考察した. 症例1は右利きウェルニッケ型交叉性失語症例で, 漢字仮名混じりの著明なジャーゴン失書を呈した. 書字障害に対する病識に乏しく発話障害を補うため積極的に筆談を用いようとしたり, 自ら日記をつけ他人に見せるといった行動がみられた. 本例のジャーゴン失書は左半球に蓄えられている文字運動覚心像が右半球言語野の統制を離れて自走して生じたと解釈された. さらに本症例の多量の書字は右半球病変でみられる過書にも一部類似していると思われた. 症例2は瀰漫性の両側前頭葉皮質下病変により, 病的把握現象とともに筆記具の存在で誘発される保続の...
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          | Published in | コミュニケーション障害学 Vol. 21; no. 2; pp. 113 - 117 | 
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| Main Author | |
| Format | Journal Article | 
| Language | Japanese | 
| Published | 
            日本コミュニケーション障害学会
    
        25.08.2004
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| ISSN | 1347-8451 | 
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| Summary: | 書字行動の異常を呈した2症例を提示し, 各症例の書字障害の機序を考察した. 症例1は右利きウェルニッケ型交叉性失語症例で, 漢字仮名混じりの著明なジャーゴン失書を呈した. 書字障害に対する病識に乏しく発話障害を補うため積極的に筆談を用いようとしたり, 自ら日記をつけ他人に見せるといった行動がみられた. 本例のジャーゴン失書は左半球に蓄えられている文字運動覚心像が右半球言語野の統制を離れて自走して生じたと解釈された. さらに本症例の多量の書字は右半球病変でみられる過書にも一部類似していると思われた. 症例2は瀰漫性の両側前頭葉皮質下病変により, 病的把握現象とともに筆記具の存在で誘発される保続の強い過書様症状を呈した. 症例2の書字行動異常は筆記具に比較的限定した使用行為と解釈され, 前頭葉から頭頂葉への抑制の障害により書字行為の解放現象が起こったものと考えられた. | 
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| ISSN: | 1347-8451 |