《研究ノート》心理支援における笑いに関する理論的考察 ホロニカル・アプローチの三点法を用いて

本論ではこれまでの笑いやユーモアの理論を概観した上で,心理支援における笑い,中でも支援が効果的に進展する場合に生じる笑いについて,統合的心理療法であるホロニカル・アプローチ(定森・定森,2019)の視点から理論的に考察した。中でも三点法(ABCモデル)の考え方を元に,信頼できる支援者(セラピスト)と安心できる環境において生じる笑いは,クライエント(相談者)の抱える苦悩である不一致体験(A点)に対して,自分と世界との一致体験(B点)としての安心感や安全感の構築に寄与する可能性が考えられること。よって心理支援の場において,まずは一致体験(B点)にまつわる笑いの創発を念頭に関わると良いと思われること...

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Published in笑い学研究 Vol. 31; pp. 87 - 93
Main Author 福島 裕人
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本笑い学会 2024
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ISSN2189-4132
2423-9054
DOI10.18991/warai.31.0_87

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Summary:本論ではこれまでの笑いやユーモアの理論を概観した上で,心理支援における笑い,中でも支援が効果的に進展する場合に生じる笑いについて,統合的心理療法であるホロニカル・アプローチ(定森・定森,2019)の視点から理論的に考察した。中でも三点法(ABCモデル)の考え方を元に,信頼できる支援者(セラピスト)と安心できる環境において生じる笑いは,クライエント(相談者)の抱える苦悩である不一致体験(A点)に対して,自分と世界との一致体験(B点)としての安心感や安全感の構築に寄与する可能性が考えられること。よって心理支援の場において,まずは一致体験(B点)にまつわる笑いの創発を念頭に関わると良いと思われること。さらにこの不一致体験(A点)と一致体験(B点)を行ったり来たりすることで,やがて自身を俯瞰する視点(C点)が構築され,その際生じる笑いは新たな気づきや感謝の念から生じるものとなる可能性について論じた。 心理支援の場においては,まずはB点の構築(いま・ここにおける安全感,安心感や快体験の獲得)を目標にし,クライエントの緊張や不安が緩和されて,思わず笑いがこぼれるような場作りが重要であると考えられた。その後,徐々にC点という俯瞰的な視点が獲得されるよう支援することを通して,ユーモアや感謝の念を伴うなど,過去の苦悩を笑い飛ばせるような笑いの創発を目標に関わることが有効ではないかと考えられた。しかし,本論はあくまでも理論的な考察に留まっており,今後これら心理支援における笑いについての実証的な検討が望まれる。
ISSN:2189-4132
2423-9054
DOI:10.18991/warai.31.0_87