若年発症糖尿病女性の家庭生活に関する一考察―配偶者,親戚.隣人,子どもから受ける理解と援助について
Ⅰ.はじめに 慢性疾患の治療が効を奏し,患者が円滑に社会生活を営んでいくためには,疾患とその治療に関する知識が,患者自身だけでなく,患者と生活を共にする周囲の人々に正しく伝達され,受け入れられ,その上で患者の闘病に対して時間的,経済的,精神的支援がおくられねばならない.しかし,患者本人や周囲の人々の無理解,種々の思惑から,患者の疾病に関する情報の伝達は必ずしも円滑にゆかず,十分な理解がなされないために患者の生活に配慮が払われず,疾病が悪化する場合がある. WHO看護専門委員会によれば,看護職は,“病人とその家族に対して病気をいやし,正常な社会生活にもどす”とともに,“心身の健康法を指導する”機...
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          | Published in | 日本看護科学会誌 Vol. 2; no. 1; pp. 39 - 47 | 
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| Main Author | |
| Format | Journal Article | 
| Language | Japanese | 
| Published | 
            日本看護科学学会
    
        15.07.1982
     | 
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| ISSN | 0287-5330 2185-8888  | 
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| Summary: | Ⅰ.はじめに 慢性疾患の治療が効を奏し,患者が円滑に社会生活を営んでいくためには,疾患とその治療に関する知識が,患者自身だけでなく,患者と生活を共にする周囲の人々に正しく伝達され,受け入れられ,その上で患者の闘病に対して時間的,経済的,精神的支援がおくられねばならない.しかし,患者本人や周囲の人々の無理解,種々の思惑から,患者の疾病に関する情報の伝達は必ずしも円滑にゆかず,十分な理解がなされないために患者の生活に配慮が払われず,疾病が悪化する場合がある. WHO看護専門委員会によれば,看護職は,“病人とその家族に対して病気をいやし,正常な社会生活にもどす”とともに,“心身の健康法を指導する”機能を有している1).このような実践を行い,報告した事例は数多いが,患者の疾病が周囲の人間に伝達される様相と,その結果を整理した研究は殆どみられない. 糖尿病は慢性疾患の1つであるが若年型2)も存在する.糖尿病の妊婦は妊娠上のトラブルが一般妊婦よりも多く3)-5),しかも遺伝性疾患であるために,若年発症の糖尿病女性では結婚する際の障害が大きく,上述したような情報の伝達が最も阻害されやすい立場にあると考えられる.また,結婚後児を得て家庭生活を営んでいく際にも,通院や食事療法,インスリン注射等が不可欠であり6)7),夫やその親族,近隣の人々や子供の理解と援助が得られなければ症状が悪化し,合併症8)9)を招来する危険も考えられる. 筆者は,若年発症の糖尿病の女性が,疾病をどのように受けとめて配偶(予定)者や親戚に伝えたか,結婚及びその後の家庭生活で困難であった事柄や受けた援助は何か,ということについて調査した.それを通じて,糖尿病という一慢性疾患患者の情報が,周囲の人間に伝達されるのを推進もしくは阻害する要因を抽出し,それが患者の治療行動に及ぼす影響を把握しようと試みた. | 
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| Bibliography: | 原著 | 
| ISSN: | 0287-5330 2185-8888  |