回復過程にある老人の対処行動に関する研究—大腿骨頸部骨折で手術を受けた患者の対処行動と行動に伴う意識変容の仮説的考察
本研究の目的は,大腿骨頸部骨折後の回復過程にある老人の対処行動の意味と行動に伴う意識変容を明らかにすることにあった.対象は,65〜91歳までの手術を受けた老人患者30名である.データは,retrospectiveな方法をとり,医師および看護婦の臨床記録より収集し,qualitative research methodsを用いて患者の言動を分析し,ラベル付け,カテゴリー化を行った.その結果,4つの対処様式とストレス反応が導き出された.結果は,以下のとおりである. 1)4つの対処様式を通して導き出されたストレス反応は,身体機能回復への可能性および自己像喪失の脅威であった. 2)4つの対処様式は,【...
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Published in | 日本老年看護学会誌(老年看護学) Vol. 4; no. 1; pp. 47 - 57 |
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Main Author | |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本老年看護学会
01.11.1999
一般社団法人 日本老年看護学会 Japan Academy of Gerontological Nursing |
Subjects | |
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ISSN | 1346-9665 2432-0811 |
DOI | 10.20696/jagn.4.1_47 |
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Summary: | 本研究の目的は,大腿骨頸部骨折後の回復過程にある老人の対処行動の意味と行動に伴う意識変容を明らかにすることにあった.対象は,65〜91歳までの手術を受けた老人患者30名である.データは,retrospectiveな方法をとり,医師および看護婦の臨床記録より収集し,qualitative research methodsを用いて患者の言動を分析し,ラベル付け,カテゴリー化を行った.その結果,4つの対処様式とストレス反応が導き出された.結果は,以下のとおりである. 1)4つの対処様式を通して導き出されたストレス反応は,身体機能回復への可能性および自己像喪失の脅威であった. 2)4つの対処様式は,【自己同一の維持】【自己統制】【情報提供と情報獲得】【挑戦と自己統合】であった. 3)4つの対処様式は,環境と自己との関係において認知される脅威に対し,自己を維持し,保護し,安定させる目的で用いられていた.4つの対処様式は,その時その場で認知される脅威によって異なるが,自己概念の一貫性や恒常性,安定した構造を確保するための対処として用いられていた.対処行動の背後には,脅威による自己概念構造の力動的相互関連が想定された. |
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Bibliography: | 原著 |
ISSN: | 1346-9665 2432-0811 |
DOI: | 10.20696/jagn.4.1_47 |