大学病院入院中のがん患者が転院を受け入れ新たな環境で人との関係性を構築するプロセス

要旨 本研究の目的は,積極的な治療継続のため大学病院から地域医療支援病院へ転院を告げられたがん患者が,転院を受け入れ新たな環境で人との関係性を構築するプロセスを明らかにし,その過程を支援する看護実践への示唆を得ることである. 対象は,A大学病院からB地域医療支援病院へ転院した消化器がん患者13名である.転院後に半構成的面接を行い,修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチ(M-GTA)を用いて分析した.その結果,本プロセスは,転院前の『葛藤を乗り越え新たな環境への準備を整える体験』を経て,転院後の『新たな環境で人との相互作用を意識しながら生きる体験』に至った.転院前の体験は〈青天の霹靂である転...

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Published in日本がん看護学会誌 Vol. 29; no. 1; pp. 62 - 70
Main Authors 本多 昌子, 神田 清子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本がん看護学会 2015
一般社団法人 日本がん看護学会
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ISSN0914-6423
2189-7565
DOI10.18906/jjscn.2015-29-1-62

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Summary:要旨 本研究の目的は,積極的な治療継続のため大学病院から地域医療支援病院へ転院を告げられたがん患者が,転院を受け入れ新たな環境で人との関係性を構築するプロセスを明らかにし,その過程を支援する看護実践への示唆を得ることである. 対象は,A大学病院からB地域医療支援病院へ転院した消化器がん患者13名である.転院後に半構成的面接を行い,修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチ(M-GTA)を用いて分析した.その結果,本プロセスは,転院前の『葛藤を乗り越え新たな環境への準備を整える体験』を経て,転院後の『新たな環境で人との相互作用を意識しながら生きる体験』に至った.転院前の体験は〈青天の霹靂である転院告知への困惑〉から始まった.転院後は,初対面の医療者への不安を抱くというような《未知の環境へ入ることへの困惑感》が生じたが,看護師の歓迎の態度に触れ人との繋がりを希求し,歩み始める.そして対象者らは,自らの身体や社会性の回復という転換点を経て《深まる人との繋がり》を獲得した. また,両プロセスにおいて,がんと闘うための手段である〈治療へ託す生への希望〉が存在していた.転院を告げられたがん患者の特徴としては〈もう治らないがんという認知〉を抱き,負のスパイラルに陥ることが明らかになった.看護師は,転院患者の認知を把握し受け止め,負のスパイラルに陥ることなく精神的に安定し,転院を受け止め適応できる環境を整えることが重要であり,それは,地域完結型医療への転換を促進できる支援に繋がると考える.
Bibliography:研究報告
ISSN:0914-6423
2189-7565
DOI:10.18906/jjscn.2015-29-1-62