筋萎縮性側索硬化症患者における病いを意味づけるプロセスの発見

要旨 本研究の目的は,筋萎縮性側索硬化症患者の病いを意味づけるプロセスを明らかにすることである.Franklの提唱する理論を基盤に,ALS患者の病いの意味づけを,意味への意志という視点から捉える.質的帰納的手法としてグラウンデッド・セオリー法を用いた.対象者は,在宅療養中のALS患者6名であった.データの収集は,参加観察と半構成的面接を用い,継続的比較分析を行った. 分析の結果,ALS患者の病いを意味づけるプロセスには,<戦略的補完行為><鏡像行為><新しい生への超越行為>の3つの位相カテゴリーが見出された.それぞれの位相は4つのサブカテゴリーを含んでいた.各位相間には,一定の時間的順次性が認...

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Published in日本看護科学会誌 Vol. 19; no. 3; pp. 28 - 37
Main Author 村岡 宏子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本看護科学学会 30.11.1999
公益社団法人 日本看護科学学会
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ISSN0287-5330
2185-8888
DOI10.5630/jans1981.19.3_28

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Summary:要旨 本研究の目的は,筋萎縮性側索硬化症患者の病いを意味づけるプロセスを明らかにすることである.Franklの提唱する理論を基盤に,ALS患者の病いの意味づけを,意味への意志という視点から捉える.質的帰納的手法としてグラウンデッド・セオリー法を用いた.対象者は,在宅療養中のALS患者6名であった.データの収集は,参加観察と半構成的面接を用い,継続的比較分析を行った. 分析の結果,ALS患者の病いを意味づけるプロセスには,<戦略的補完行為><鏡像行為><新しい生への超越行為>の3つの位相カテゴリーが見出された.それぞれの位相は4つのサブカテゴリーを含んでいた.各位相間には,一定の時間的順次性が認められ,病いを意味づけるプロセスは発展的変化を示した.最初患者は,病いの状況が補われれば病気前と変わらず完全であることを自他に示そうとするが,やがて病いを自己の現実として直視するようになり,そして,病いに積極的な意味を与え,新しい生き方を切り拓くようになる.つまりALS患者は,生きる意味に向かって3位相の価値転換をしていた. 以上より,ALS患者にとって極限状況とも思える進行体験は,主体的努力によって乗り越えられることが明確になった.看護ケアの提供において,ALS患者の病いを意味づける能力を高めることの重要性が示唆された.
Bibliography:原著
ISSN:0287-5330
2185-8888
DOI:10.5630/jans1981.19.3_28