国内の自然環境において腐朽木および腐朽枝から見出された幼生生殖タマバエ(ハエ目:タマバエ科)

菌食性タマバエの中には,“母幼虫”または半蛹hemipupaと呼ばれる特殊な“母蛹”の体内で卵巣が発達し,卵胎生の単性生殖により“娘幼虫”を産生する幼生生殖という繁殖様式を持つものが知られている。これまで国内では,スペイヤーキノコタマバエMycophila speyeriやHeteropeza pygmaeaが屋内のきのこ栽培施設で確認されたことはあったが,自然環境においての発生はこれまで報告されていなかった。本研究では,腐朽木および腐朽枝の調査により,国内の自然環境から初めて幼生生殖タマバエを確認した。幼生生殖タマバエはいずれも広葉樹の白色腐朽菌から得られた。佐賀県内での調査では,比較的標高...

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Published inNihon Ōyō Dōbutsu Konchū Gakkai shi Vol. 67; no. 2; pp. 47 - 52
Main Authors 古川, 晶啓, 澤畠, 拓夫, 尾崎, 一天, Elsayed, A.K, 湯川, 淳一, 徳田, 誠
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 01.05.2023
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ISSN0021-4914

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Summary:菌食性タマバエの中には,“母幼虫”または半蛹hemipupaと呼ばれる特殊な“母蛹”の体内で卵巣が発達し,卵胎生の単性生殖により“娘幼虫”を産生する幼生生殖という繁殖様式を持つものが知られている。これまで国内では,スペイヤーキノコタマバエMycophila speyeriやHeteropeza pygmaeaが屋内のきのこ栽培施設で確認されたことはあったが,自然環境においての発生はこれまで報告されていなかった。本研究では,腐朽木および腐朽枝の調査により,国内の自然環境から初めて幼生生殖タマバエを確認した。幼生生殖タマバエはいずれも広葉樹の白色腐朽菌から得られた。佐賀県内での調査では,比較的標高が高い場所の方が高頻度で確認され,夏季よりも春季に確認される頻度が高かった。幼虫および一部の種の成虫形態学の特徴から,Miastor,Mycophila,Heteropeza,Heteropezula,Leptosynaの少なくとも5属の幼生生殖タマバエが国内に生息していることが判明した。
Bibliography:947298
ZZ00014825
ISSN:0021-4914