クワゴマダラヒトリ(チョウ目:トモエガ科)の個体数変動パターンと捕食寄生者および病原微生物による死亡率の関係

クワゴマダラヒトリは,日本全土に広く分布する年1化性のヒトリガの1種である。1989年以来,生息環境の異なる近畿地方と長野県南部および八丈島における個体数変動と越冬後幼虫の捕食寄生者と病原微生物の種類とそれらによる死亡率を調査し,両者の関係性を検討した。クワゴマダラヒトリの近畿個体群における周期変動には,ベレックチビアメバチ(ヒメバチ科)とCarcelia rasa(ヤドリバエ科)などを主とした多数の捕食寄生者が作用した。しかし,本種の個体群密度と寄生率との関係は,密度逆依存を示し,密度抑制効果はなかった。病原微生物による死亡率は,NPVが主体となり,密度依存関係を示し,密度のピークを低下させ...

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Published inNihon Ōyō Dōbutsu Konchū Gakkai shi Vol. 66; no. 4; pp. 135 - 147
Main Author 本藤, 勝
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 01.11.2022
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ISSN0021-4914

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Summary:クワゴマダラヒトリは,日本全土に広く分布する年1化性のヒトリガの1種である。1989年以来,生息環境の異なる近畿地方と長野県南部および八丈島における個体数変動と越冬後幼虫の捕食寄生者と病原微生物の種類とそれらによる死亡率を調査し,両者の関係性を検討した。クワゴマダラヒトリの近畿個体群における周期変動には,ベレックチビアメバチ(ヒメバチ科)とCarcelia rasa(ヤドリバエ科)などを主とした多数の捕食寄生者が作用した。しかし,本種の個体群密度と寄生率との関係は,密度逆依存を示し,密度抑制効果はなかった。病原微生物による死亡率は,NPVが主体となり,密度依存関係を示し,密度のピークを低下させる要因として作用した。低密度で安定した変動パターンを示した長野県南部では,ヤドリバエのC. rasaとNPVによる死亡が強く働き,これらによる越冬後幼虫の死亡率が密度に依存して作用した。高密度で安定した変動パターンを示した八丈島では,捕食寄生者の働きは弱く,主にNPVを中心とした病原微生物による死亡率が越冬後幼虫に作用した。病原微生物による死亡率は,地域的な密度に強く依存し,増加率に大きく関与した。今回の検討から,本種の異なった変動パターンを示す地域個体群では,越冬後幼虫に働く捕食寄生者と病原微生物の作用に違いがあり,その違いが変動パターンに影響を与えた可能性が示唆された。
Bibliography:945715
ZZ00014825
ISSN:0021-4914