晩抽性のハクサイ品種「いとさい1号」の育成

ハクサイF1品種「いとさい1号」は,市販F1品種「タイニーシュシュ」の両親を反復親に,「つけな中間母本農2号」由来のハクサイ系統を一回親にして育成した晩抽性品種である.「つけな中間母本農2号」は,春化経路上の開花抑制遺伝子であるBrFLC2とBrFLC3に変異があり,その結果低温に遭遇しても花成が誘導されにくくなっている.この「つけな中間母本農2号」が持つ晩抽性のBrFLC遺伝子をDNAマーカー選抜することにより,効率的に晩抽性品種を育成することができた.岩手県において低温遭遇量の多い春播き栽培試験を行ったところ,「いとさい1号」は晩抽性が高い既存のF1品種を上回る晩抽性を示した.晩抽性以外の...

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Published inIkushugaku kenkyu Vol. 25; no. 2; pp. 150 - 157
Main Authors 森玉, 陽介, 本城, 正憲, 畠山, 勝徳, 片岡, 園, 横井, 修司, 高畑, 義人, 漆原, 昌二, 西川, 和裕, 北本, 尚子, 和﨑, 俊文, 谷村, 佳則, 奥, 聡史, 高橋, 極, 塚﨑, 光, 由比, 進, 川戸, 善徳, 松浦, 拓也, 豊田, 春喜
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本育種学会 01.12.2023
Subjects
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ISSN1344-7629
1348-1290
DOI10.1270/jsbbr.23J04

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Summary:ハクサイF1品種「いとさい1号」は,市販F1品種「タイニーシュシュ」の両親を反復親に,「つけな中間母本農2号」由来のハクサイ系統を一回親にして育成した晩抽性品種である.「つけな中間母本農2号」は,春化経路上の開花抑制遺伝子であるBrFLC2とBrFLC3に変異があり,その結果低温に遭遇しても花成が誘導されにくくなっている.この「つけな中間母本農2号」が持つ晩抽性のBrFLC遺伝子をDNAマーカー選抜することにより,効率的に晩抽性品種を育成することができた.岩手県において低温遭遇量の多い春播き栽培試験を行ったところ,「いとさい1号」は晩抽性が高い既存のF1品種を上回る晩抽性を示した.晩抽性以外の形質は,葉面の毛がない等「タイニーシュシュ」とほぼ同じで,生食も可能であった.抽だいに必要な低温処理日数を調査したところ,「タイニーシュシュ」,「春の祭典」は10~20日間の低温処理によって抽だいしたが,「いとさい1号」では40日間以上の低温処理が必要であり,高い低温要求性を示した.既存品種を用いた春播き作型では,低温遭遇による抽だいを回避するために暖房や被覆資材が必須であったが,「いとさい1号」によってそれらを用いない低コスト春播き栽培が可能になると考えられたため,品種登録出願を行った.
Bibliography:ZZ00015503
950350
ISSN:1344-7629
1348-1290
DOI:10.1270/jsbbr.23J04