飽和脂肪酸の摂取基準の考え方

日本人の飽和脂肪酸の摂取基準策定 (2005年版) に用いた論文をエビデンステーブル (表) として提示し, 策定の基本的な考え方を詳しく述べた。飽和脂肪酸は摂取量が多いと肥満や心筋梗塞が増加し, 少ないと脳出血が増加する至適摂取範囲の狭い脂肪酸である。このため, 飽和脂肪酸の目標量は18歳以上で4.5%エネルギー以上, 7%エネルギー未満に設定された。飽和脂肪酸摂取量が増加すると, 肥満度, 血中LDL-コレステロール値が増加し, 糖尿病, 心筋梗塞罹患が増加する。米国での飽和脂肪酸摂取量を10%エネルギー以下 (National Cholesterol Education Program...

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Published inNihon Eiyō, Shokuryō Gakkai shi Vol. 60; no. 1; pp. 19 - 52
Main Authors 三宅, 吉博, 井藤, 英喜, 江崎, 治, 窄野, 昌信
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益社団法人 日本栄養・食糧学会 2007
日本栄養・食糧学会
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ISSN0287-3516
1883-2849
DOI10.4327/jsnfs.60.19

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Summary:日本人の飽和脂肪酸の摂取基準策定 (2005年版) に用いた論文をエビデンステーブル (表) として提示し, 策定の基本的な考え方を詳しく述べた。飽和脂肪酸は摂取量が多いと肥満や心筋梗塞が増加し, 少ないと脳出血が増加する至適摂取範囲の狭い脂肪酸である。このため, 飽和脂肪酸の目標量は18歳以上で4.5%エネルギー以上, 7%エネルギー未満に設定された。飽和脂肪酸摂取量が増加すると, 肥満度, 血中LDL-コレステロール値が増加し, 糖尿病, 心筋梗塞罹患が増加する。米国での飽和脂肪酸摂取量を10%エネルギー以下 (National Cholesterol Education Program Step I diet) または7%エネルギー以下 (National Cholesterol Education Program Step II diet) にした多くの介入研究で, LDL-コレステロール値低下, 体重減少が認められている。米国のコホート研究 (観察研究) でも, 飽和脂肪酸摂取量が増加すると, 用量依存性に心筋梗塞や糖尿病罹患の増加が認められている。日本人の飽和脂肪酸摂取量のエネルギー比率の中央値 (50パーセンタイル値) は男性18歳以上で4.9-7.2%エネルギー, 女性18歳以上で5.4-7.9%エネルギーとなり, 平均では約6.3%エネルギーとなる。日本人の現状, あるいは伝統型食生活も考慮に入れて, 心筋梗塞, 肥満, 糖尿病の予防のため, 7%エネルギーが目標量 (上限) に設定された。日本人中年男女を対象にした観察研究では, 飽和脂肪酸の摂取量が少ないと, 血圧, 肥満度, コレステロール値, 喫煙, アルコール摂取量を考慮しても, 脳出血の発症頻度の増加が認められている。ハワイ在住中年男性日系人の観察研究でも, 飽和脂肪酸の摂取量が10g/day未満の人は, 10g/day以上の人に比べ, 約2倍の脳卒中による死亡数の増加を認めている。これらの研究結果から, 18歳以上で, 4.5%エネルギーが下限値に設定された。
Bibliography:734121
ZZ00014795
ISSN:0287-3516
1883-2849
DOI:10.4327/jsnfs.60.19