糖脂質の消化管吸収と栄養生理機能に関する研究

糖脂質は自然界に普遍的に存在し, 日常的に食品成分として摂取されている。にもかかわらず, その消化管吸収機構や栄養機能についてはほとんど知られていなかった。本研究では, 蒸散型光散乱検出―HPLC法を応用し, さまざまな骨格構造をもつ糖脂質の一斉定量検出に成功した。本法を応用してグリセロ糖脂質の消化管吸収機構を動物実験で調べ, 消化管内で脱アシル化されたガラクトシルグリセロールは消化も吸収もされないことを見出した。さらに継続的な植物糖脂質の摂取によって, 下部消化管 (盲腸や大腸) 内環境が改善されることが示唆された。一方, スフィンゴ糖脂質の消化管吸収において, 植物や真菌類に特徴的なスフィ...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published inNihon Eiyō, Shokuryō Gakkai shi Vol. 60; no. 1; pp. 11 - 17
Main Author 菅原, 達也
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益社団法人 日本栄養・食糧学会 2007
日本栄養・食糧学会
Subjects
Online AccessGet full text
ISSN0287-3516
1883-2849
DOI10.4327/jsnfs.60.11

Cover

More Information
Summary:糖脂質は自然界に普遍的に存在し, 日常的に食品成分として摂取されている。にもかかわらず, その消化管吸収機構や栄養機能についてはほとんど知られていなかった。本研究では, 蒸散型光散乱検出―HPLC法を応用し, さまざまな骨格構造をもつ糖脂質の一斉定量検出に成功した。本法を応用してグリセロ糖脂質の消化管吸収機構を動物実験で調べ, 消化管内で脱アシル化されたガラクトシルグリセロールは消化も吸収もされないことを見出した。さらに継続的な植物糖脂質の摂取によって, 下部消化管 (盲腸や大腸) 内環境が改善されることが示唆された。一方, スフィンゴ糖脂質の消化管吸収において, 植物や真菌類に特徴的なスフィンゴイド塩基は小腸上皮細胞に吸収されにくいことを明らかにした。このスフィンゴイド塩基の吸収選択性には, P-糖タンパク質 (MDR1) が関与していることが強く示唆された。また, さまざまな食品成分由来のスフィンゴイド塩基による大腸がん細胞に対するアポトーシス誘導作用を明らかにし, トウモロコシや酵母由来セレブロシドによる1,2-ジメチルヒドラジン投与マウスの大腸腺種誘発抑制効果を示した。これら結果は, 糖脂質の新たな食品機能の可能性を示すものであり, 今後の研究の発展が期待される。
Bibliography:734120
ZZ00014795
ISSN:0287-3516
1883-2849
DOI:10.4327/jsnfs.60.11