自殖家系を用いた雄性不稔遺伝子をヘテロ接合型で保有するヒノキ精英樹の発見
花粉症を引き起こす主要な樹種の一つであるヒノキについて,雄性不稔遺伝子をヘテロ接合型で持つ精英樹を探索した。ヒノキ精英樹8クローンの自殖家系を育成し,7年生での花粉の飛散と8年生での花粉組織の細胞を観察した結果,丹沢6と丹沢7の自殖後代でそれぞれ22.2%と25.0%の雄性不稔個体が確認され,両クローンが雄性不稔遺伝子をヘテロ接合型で持つことが判明した。花粉稔性が正常な精英樹で成熟花粉の形成が確認された2020年3月30日に雄性不稔個体の花粉細胞を観察した結果,花粉母細胞期のまま発育が停止していた。また,丹沢7の自殖後代の雄性不稔2個体から採取した種子はともに発芽し,雌性は正常なことが確認され...
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Published in | Nihon Shinrin Gakkaishi Vol. 104; no. 3; pp. 176 - 181 |
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Main Authors | , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本森林学会
01.06.2022
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Subjects | |
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ISSN | 1349-8509 1882-398X |
DOI | 10.4005/jjfs.104.176 |
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Summary: | 花粉症を引き起こす主要な樹種の一つであるヒノキについて,雄性不稔遺伝子をヘテロ接合型で持つ精英樹を探索した。ヒノキ精英樹8クローンの自殖家系を育成し,7年生での花粉の飛散と8年生での花粉組織の細胞を観察した結果,丹沢6と丹沢7の自殖後代でそれぞれ22.2%と25.0%の雄性不稔個体が確認され,両クローンが雄性不稔遺伝子をヘテロ接合型で持つことが判明した。花粉稔性が正常な精英樹で成熟花粉の形成が確認された2020年3月30日に雄性不稔個体の花粉細胞を観察した結果,花粉母細胞期のまま発育が停止していた。また,丹沢7の自殖後代の雄性不稔2個体から採取した種子はともに発芽し,雌性は正常なことが確認された。これらの個体は,今後のヒノキの雄性不稔育種に活用できることが明らかとなった。なお,自殖個体の種子発芽率と初期成長は他殖個体より劣っており,自殖が花粉細胞の発育に影響している可能性も排除しきれないことから,今後,戻し交配家系などを用いた追加検証を行うことも必要と考えられた。 |
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Bibliography: | 942205 ZZ20018854 |
ISSN: | 1349-8509 1882-398X |
DOI: | 10.4005/jjfs.104.176 |