中山間部における在宅ケアの現況・課題と方向性

目的と対象・方法: いわゆる中山間部における在宅ケアに関する現在の問題点を明らかにすることを目的とし, 愛知県の東に位置する厚生連足助病院の訪問診療を受けている患者 (平成8年7月1日~平成10年12月31日までの利用者149名: 男59名, 女90名, 平均年齢は81歳: 19~103歳) を対象に, 日常生活自立度, 主な介護者, 患者・利用者宅への片道所要時間, 利用者の経過について調査した。また, 在宅ケアにおける介護者の抱える問題点を知るために, 平成9年10月31日現在, 訪問診療・看護を利用していた47名の主たる介護者を対象にアンケートを実施した。 結果: 平成8年度の全国訪問看...

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Published inNihon Nōson Igakkai zasshi Vol. 48; no. 5; pp. 710 - 719
Main Authors 林, 美往, 鈴木, 智穂, 池戸, 昌秋, 早川, 富博, 斎場, 寛子, 林, 香月, 安藤, 寿代, 河合, 由加里, 浜田, 茂彰, 都筑, 瑞夫
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本農村医学会 01.01.2000
日本農村医学会
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ISSN0468-2513
1349-7421
DOI10.2185/jjrm.48.710

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Summary:目的と対象・方法: いわゆる中山間部における在宅ケアに関する現在の問題点を明らかにすることを目的とし, 愛知県の東に位置する厚生連足助病院の訪問診療を受けている患者 (平成8年7月1日~平成10年12月31日までの利用者149名: 男59名, 女90名, 平均年齢は81歳: 19~103歳) を対象に, 日常生活自立度, 主な介護者, 患者・利用者宅への片道所要時間, 利用者の経過について調査した。また, 在宅ケアにおける介護者の抱える問題点を知るために, 平成9年10月31日現在, 訪問診療・看護を利用していた47名の主たる介護者を対象にアンケートを実施した。 結果: 平成8年度の全国訪問看護ステーション利用者の実態との比較から, 1) 年齢構成は90歳以上の占める割合が23.4%と高かった。2) 日常生活自立度はBが多かった。3) 主な介護者は女性が8割を占め, その内訳は嫁が52%と全国の2倍であった。4) 利用者宅への片道所要時間は31~60分が32%で全国の3倍であった。5) 利用者の転帰のうち死亡は66名で病院死が44名 (67%) 在宅死が22名 (33%) であった。アンケートの結果では, 1) 介護者は60歳以上が半数を占め, 介護年数は45%が5年以上の介護をしていた。2) 介護で大変だと思うことでは, 精神的負担と食事・排泄介助が多かったが, 3) 手伝って欲しいことの中では, 食事・排泄介助は少なく, 希望するサービスは1日預かり施設, おむつの回収が多かった。4) 在宅死については希望する, 出来れば在宅で, 協力があれば在宅でを合わせると23名 (61%) が在宅死を希望された 結論: 以上の結果は, 高齢者が高齢者を介護し, かつ地形の問題から患者・利用者が過疎に点在するという, 中山間部である当地区の在宅ケアの実態を明らかにし, 今後のより良き在宅ケアのシステム作りへの手がかりを与えるものと考える。すなわち, 医療・福祉 (介護) サービス提供者間の密接な連携 (人のネットワーク) と, 在宅ケアの利用者・介護者と医療・福祉 (介護) サービス提供者の両者が, 共に安心・満足の得られるような医療情報通信システムの構築が必要である。
Bibliography:ZZ00011651
652070
ISSN:0468-2513
1349-7421
DOI:10.2185/jjrm.48.710