動物園水族館および野生動物救護施設における高病原性鳥インフルエンザのサーベイランス体制と防疫対策の現状と課題

飼養鳥および野鳥の救護個体の高病原性鳥インフルエンザ(HPAI)サーベイランス体制と防疫対策について調査した。飼養鳥の簡易検査は動物園水族館で実施されることが多かったが,遺伝子検査機関が決まっていない自治体は30%以上みられた。動物園水族館の約40%が野生動物の救護個体を受け入れており,HPAIが国内発生した時点でその80%以上の施設が受け入れを停止した。一方,野生動物の救護施設では,施設から半径30km圏内でHPAIが発生した場合でも50%以上の施設が救護された野生鳥類を受け入れていた。動物園水族館では,HPAI感染が疑われる飼養動物は隔離飼育される傾向にあり,HPAIが確定した時点で安楽殺...

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Published inJapan society of veterinary epidemiology Vol. 26; no. 2; pp. 90 - 107
Main Authors 細田, 凜, 羽山, 伸一, 牛根, 奈々, 加藤, 卓也, 森口, 紗千子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 獣医疫学会 20.12.2022
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ISSN1343-2583
1881-2562
DOI10.2743/jve.26.90

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Summary:飼養鳥および野鳥の救護個体の高病原性鳥インフルエンザ(HPAI)サーベイランス体制と防疫対策について調査した。飼養鳥の簡易検査は動物園水族館で実施されることが多かったが,遺伝子検査機関が決まっていない自治体は30%以上みられた。動物園水族館の約40%が野生動物の救護個体を受け入れており,HPAIが国内発生した時点でその80%以上の施設が受け入れを停止した。一方,野生動物の救護施設では,施設から半径30km圏内でHPAIが発生した場合でも50%以上の施設が救護された野生鳥類を受け入れていた。動物園水族館では,HPAI感染が疑われる飼養動物は隔離飼育される傾向にあり,HPAIが確定した時点で安楽殺が検討されることが多かった。野鳥のHPAIサーベイランスでは,家きんや飼養鳥でのHPAI発生よりも前に野鳥でHPAIウイルスを検出することが必ずしもできていないことを鑑みると,動物園水族館は国内におけるHPAIが発生の有無に関わらず,渡り鳥の飛来時期に野鳥の救護を停止することが望ましい。飼養動物におけるHPAIの感染防止対策や封じ込めを効果的に実施するには,自治体と動物園水族館など関係者間の定期的な関連手順の確認や,自治体内での遺伝子検査機関の確保を推奨する。また国や関係機関は,動物園水族館や野生動物の救護施設を支援するために,移動式の隔離施設やリスクマネジメント手法の整備が求められる。
Bibliography:ZZ00015317
946249
ISSN:1343-2583
1881-2562
DOI:10.2743/jve.26.90