登熟期間の乾物生産と窒素蓄積からみた秋播性コムギ品種「きたほなみ」の多収性

秋播性多収コムギ品種「きたほなみ」は,国内生産量の5割以上を占める北海道の基幹品種である.本研究では,「きたほなみ」の多収要因を登熟生理の点から明らかにするため,2014/2015年と2015/2016年の2作期にわたって「きたほなみ」と旧品種「ホクシン」を栽培し,登熟期間を通じて器官別・部位別の乾物重ならびに窒素蓄積量を調査した.子実収量は,2014/2015年では「きたほなみ」が「ホクシン」よりも有意に多く,「きたほなみ」の単位面積当たり粒数を多く確保できたことが要因であった.また,2015/2016年では「きたほなみ」の一穂の着粒数が少なかったが,粒重が増加することで多収となった.「きた...

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Published inJapanese journal of crop science Vol. 91; no. 4; pp. 322 - 327
Main Authors 大西, 志全, 神野, 裕信, 笠島, 真也, 山田, 翔太, 高橋, 肇, 伊藤, 博武
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本作物学会 05.10.2022
Subjects
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ISSN0011-1848
1349-0990
DOI10.1626/jcs.91.322

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Summary:秋播性多収コムギ品種「きたほなみ」は,国内生産量の5割以上を占める北海道の基幹品種である.本研究では,「きたほなみ」の多収要因を登熟生理の点から明らかにするため,2014/2015年と2015/2016年の2作期にわたって「きたほなみ」と旧品種「ホクシン」を栽培し,登熟期間を通じて器官別・部位別の乾物重ならびに窒素蓄積量を調査した.子実収量は,2014/2015年では「きたほなみ」が「ホクシン」よりも有意に多く,「きたほなみ」の単位面積当たり粒数を多く確保できたことが要因であった.また,2015/2016年では「きたほなみ」の一穂の着粒数が少なかったが,粒重が増加することで多収となった.「きたほなみ」は,地上部乾物重が出穂期から成熟期にかけて直線的に増加したのに対し,「ホクシン」では乳熟期前後に大きく増加し,その後の増加量は少なかった.このため,CGRは「きたほなみ」が「ホクシン」に比較して登熟の前半で低く,後半では高かった.「きたほなみ」は,子実窒素含有率が登熟後半で低かったことから,2014/2015年では子実の窒素含有量が低く推移した.また,子実タンパク質含有率が低下しやすい品種特性も登熟期間の窒素代謝の観点から明らかになった.
Bibliography:945728
ZZ00014890
ISSN:0011-1848
1349-0990
DOI:10.1626/jcs.91.322