保存条件が煎茶の品質に及ぼす影響

緑茶を放置すると,湿気を吸って速やかに変質することはよく知られている。緑茶は摘採した後,直ちに蒸熱や釜で炒ることで酸化酵素を失活させて製造するため,酸化されやすい成分を多く含む。従って,酸化酵素の活性を利用して製造されるウーロン茶や紅茶に比べ,緑茶は変質しやすい。緑茶の変質と成分との関係について多くの知見がある。保存による緑茶の表面色の変化は温度と水分の影響が大きい。これは,緑色を構成する主成分のクロロフィルの減少が要因と考えられている。保存期間が長いほど脂質,特に糖脂質が減少するが,緑茶に多く含まれる不飽和脂肪酸のリノレン酸およびリノール酸の酸化と分解によって生じる揮発性成分が緑茶の変質臭に...

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Bibliographic Details
Published inChagyō kenkyū hōkoku Vol. 2013; no. 116; pp. 116_23 - 116_32
Main Authors 水上, 裕造, 山口, 優一
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本茶業学会 01.12.2013
日本茶業技術協会
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ISSN0366-6190
1883-941X
DOI10.5979/cha.2013.116_23

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Summary:緑茶を放置すると,湿気を吸って速やかに変質することはよく知られている。緑茶は摘採した後,直ちに蒸熱や釜で炒ることで酸化酵素を失活させて製造するため,酸化されやすい成分を多く含む。従って,酸化酵素の活性を利用して製造されるウーロン茶や紅茶に比べ,緑茶は変質しやすい。緑茶の変質と成分との関係について多くの知見がある。保存による緑茶の表面色の変化は温度と水分の影響が大きい。これは,緑色を構成する主成分のクロロフィルの減少が要因と考えられている。保存期間が長いほど脂質,特に糖脂質が減少するが,緑茶に多く含まれる不飽和脂肪酸のリノレン酸およびリノール酸の酸化と分解によって生じる揮発性成分が緑茶の変質臭に寄与することが考えられている。さらに,保存中の緑茶の品質低下とアスコルビン酸の減少は高い相関係数で関係があるため,アスコルビン酸は煎茶の変質のよい指標となる。緑茶の変質に最も大きな影響を与える要因は,緑茶に含まれる水分の増加と保存温度および酸素濃度であり,次いで光があげられる。緑茶の変質を防ぐため,1969年頃ガスバリア性の高い緑茶用の袋が開発され,それに伴い緑茶に適した袋用のガス置換包装機も開発され,ガス置換包装は広く普及した。緑茶の流通に適した袋はガスバリア性の高い不透明なものであるが,中身を見て商品を選択したいという消費者の要望がある。そこで,透明袋でもガスバリア性を持たせた袋が開発された。しかし,透明袋は光による変質が懸念される。そこで,辻は透明袋を用いて光照射による品質変化を調べたところ,店頭と同じ光照射条件でも窒素でガス置換することで酸素濃度を低く保ち,かつ水蒸気バリア性が高い袋を用いれば,アルミ袋と同程度の品質を維持できることを明らかにした。包装した茶の変質に関する研究は1980年頃まで盛んに行われた。その頃に比べ,包装資材の性能は著しく進歩した。現在では,経済的でガスバリア性が高く,より軽量で丈夫な包装資材を組み合わせた袋が広く普及している。しかし,現在使用されている袋を用いて,保存による緑茶の変質を調べた研究例は非常に少なく,不明な点が多い。また,これまで行われてきた保存試験は概ね3ヶ月から半年であり,1年と長期に渡り調べられた報告は少ない。そこで今回,現在使用されている袋を用いて,緑茶の中でも煎茶の品質に及ぼす影響を調べたので報告する。
Bibliography:870625
ZZ00016154
ISSN:0366-6190
1883-941X
DOI:10.5979/cha.2013.116_23