北海道東部のコケ型林床の亜寒帯針葉樹同齢林における稚樹の分布と地表環境

北海道東部の阿寒湖近傍の標高約700 mの緩斜面に成立する林齢約120年のトドマツを主とする天然生針葉樹同齢林において,コケ型の林床に生育する稚樹の空間分布と地表および表層土壌の環境の調査を行い,稚樹の局所密度と環境要因との関係を条件付き自己回帰(CAR)モデルを用いて解析した。調査区(32 m × 32 m)における当年生稚樹を除いた稚樹の本数密度は,トドマツが35,859 本/ha,アカエゾマツとエゾマツが合わせて4,902 本/haであり,これらの稚樹はすべて地表面から発生していた。稚樹の最大樹高は,いずれの樹種でも30 cm未満であった。トドマツとエゾマツ類の稚樹の分布様式は0.5~2...

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Published inJapanese Journal of Forest Environment Vol. 61; no. 2; pp. 85 - 94
Main Authors 鈴木, ななみ, 保科, 友希, 田中, 光佑, 井上, 昴, 小林, 香奈, 寺澤, 和彦, 酒井, 賢一
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 森林立地学会 25.12.2019
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ISSN0388-8673
2189-6275
DOI10.18922/jjfe.61.2_85

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Summary:北海道東部の阿寒湖近傍の標高約700 mの緩斜面に成立する林齢約120年のトドマツを主とする天然生針葉樹同齢林において,コケ型の林床に生育する稚樹の空間分布と地表および表層土壌の環境の調査を行い,稚樹の局所密度と環境要因との関係を条件付き自己回帰(CAR)モデルを用いて解析した。調査区(32 m × 32 m)における当年生稚樹を除いた稚樹の本数密度は,トドマツが35,859 本/ha,アカエゾマツとエゾマツが合わせて4,902 本/haであり,これらの稚樹はすべて地表面から発生していた。稚樹の最大樹高は,いずれの樹種でも30 cm未満であった。トドマツとエゾマツ類の稚樹の分布様式は0.5~2mの区画サイズにおいて集中分布であり,両者は同所的に分布していた。地表環境の空間変動は大きく,散乱光透過率は12.5~37.7%,コケ被度は0~100%,コケの高さは0~6cmの範囲で変動した。また,調査区内のサブプロット(4 m × 4 m)において,表層土壌のpHは3.8~5.6,C含有率は10.9~52.2%,N含有率は0.7~2.3%,CN比は15.2~26.5の範囲で変動した。CARモデルによる解析の結果,トドマツとエゾマツ類の1年生以上の稚樹の局所密度に表層土壌のC含有率とCN比がそれぞれ負と正の影響を与えていることが示された。エゾマツ類の稚樹については,これに加えてコケの高さが負の影響を与えていることが示された。これらの結果から,地表および表層土壌における小さな空間スケールでの環境の異質性が,無生物的あるいは土壌中の微生物を介した関係を含む生物的な関係を通じて稚樹の空間分布に影響を及ぼしている可能性が推察された。
Bibliography:ZZ00007967
931072
ISSN:0388-8673
2189-6275
DOI:10.18922/jjfe.61.2_85