モモ ‘桃水’ のエチレン生成と軟化特性
モモ(Prunus persica(L.)Batsch)の肉質は,収穫後の貯蔵および消費者の嗜好性の観点から重要な形質である.溶質モモの果実は典型的なクライマクテリック型の成熟を示し,成熟後期にエチレン生成の急増と果実硬度の急速な低下がみられる.一方で,硬肉モモではエチレンがほとんど生成されず,樹上や収穫後において硬度が高く維持される.本研究では,‘川中島白桃’の放任受粉の実生から選抜されたと言われている‘桃水’が硬肉性を持つことを明らかにした.‘桃水’は棚持ち期間が長く,肉質がサクサクしているが,そのエチレン生成や軟化特性は明らかにされていない.そこで,エチレンのアナログであるプロピレンを外...
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Published in | Engeigaku kenkyuu Vol. 19; no. 1; pp. 61 - 67 |
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Main Authors | , , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | English Japanese |
Published |
一般社団法人 園芸学会
2020
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Subjects | |
Online Access | Get full text |
ISSN | 1347-2658 1880-3571 |
DOI | 10.2503/hrj.19.61 |
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Summary: | モモ(Prunus persica(L.)Batsch)の肉質は,収穫後の貯蔵および消費者の嗜好性の観点から重要な形質である.溶質モモの果実は典型的なクライマクテリック型の成熟を示し,成熟後期にエチレン生成の急増と果実硬度の急速な低下がみられる.一方で,硬肉モモではエチレンがほとんど生成されず,樹上や収穫後において硬度が高く維持される.本研究では,‘川中島白桃’の放任受粉の実生から選抜されたと言われている‘桃水’が硬肉性を持つことを明らかにした.‘桃水’は棚持ち期間が長く,肉質がサクサクしているが,そのエチレン生成や軟化特性は明らかにされていない.そこで,エチレンのアナログであるプロピレンを外生処理した‘桃水’果実のエチレン生成および果実軟化の様相を調査した.無処理の果実では,収穫時期や栽培地に関わらずエチレンはほとんど検出されず,果実硬度が高く維持された.プロピレン処理により果実硬度は著しく低下したが,その間もエチレン生成はほとんど検出されなかった.モモの硬肉性の原因遺伝子として同定されたPpYUC11遺伝子の遺伝子型調査により,PpYUC11遺伝子の5′隣接領域におけるトランスポゾン様配列の挿入および第1イントロン内のSSRのいずれについても,‘桃水’の遺伝子型は他の硬肉品種の遺伝子型と同じであることが明らかになった.これらの結果から,‘桃水’はエチレン生成および果実軟化が抑制された硬肉モモであることが示唆された. |
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Bibliography: | 930986 ZZ20004168 |
ISSN: | 1347-2658 1880-3571 |
DOI: | 10.2503/hrj.19.61 |