渓流河川水質への森林機能の影響

屋久島は周囲を黒潮が流れ海水の蒸発が活発であり,急峻な山岳のため降雨量が非常に多い。このため,北欧や米国北東部と同様に土壌層が薄い。さらに,母岩が花崗岩であることも北欧,米国北東部と同様である。また,化石燃料使用量が増大している東アジア諸国の東側に位置している。したがって,屋久島は酸性降下物による陸水影響を検討する最適の地点である。さらに,豊富な降水により豊かな森林が発達しており,この森林が酸性降下物と渓流水質の仲介者としてどのように機能しているかも検討できる。 降水のpHとSO42-は明確な季節変動を示した。すなわち,冬季にpHは低く,SO42-は高濃度になっている。これは明確に大陸の影響を...

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Published inRikusuigaku zasshi Vol. 63; no. 1; pp. 11 - 19
Main Authors 海老瀬, 潜一, 浮田, 正夫, 柿本, 大典, 永淵, 修
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本陸水学会 01.02.2002
Subjects
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ISSN0021-5104
1882-4897
DOI10.3739/rikusui.63.11

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Summary:屋久島は周囲を黒潮が流れ海水の蒸発が活発であり,急峻な山岳のため降雨量が非常に多い。このため,北欧や米国北東部と同様に土壌層が薄い。さらに,母岩が花崗岩であることも北欧,米国北東部と同様である。また,化石燃料使用量が増大している東アジア諸国の東側に位置している。したがって,屋久島は酸性降下物による陸水影響を検討する最適の地点である。さらに,豊富な降水により豊かな森林が発達しており,この森林が酸性降下物と渓流水質の仲介者としてどのように機能しているかも検討できる。 降水のpHとSO42-は明確な季節変動を示した。すなわち,冬季にpHは低く,SO42-は高濃度になっている。これは明確に大陸の影響を示している。渓流水質は中央山岳の源流部では降水に非常に近い値であった。これは降水がそのまま流出していることを意味しており,酸1生降下物の陸水への影響が懸念される。さらに,島西部の渓流河川群のイオン濃度が特異的に高濃度あった。しかし,調査地点間の類似度をDistance Indexにより評価すると島西部の水質は濃縮によるものと推察された。これは流域を覆う照葉樹林による大気降下物の遮蔽,濃縮が原因と考えられた。
Bibliography:650370
ZZ00016414
ISSN:0021-5104
1882-4897
DOI:10.3739/rikusui.63.11