サブサハラ・アフリカにおける食料自給の確保に必要な灌漑基盤の整備

サブサハラ・アフリカ (以下, SSA地域) では, 急速な人口増加と頻発する干ばつにより, 食料の確保ができず, 食料不足は年々増加の傾向にある.このため, 同地域では輸入と食料援助に頼る傾向をますます強くしている.このことが, SSA地域の恒常的な経済の不安と貧困の原因となっている.この地域における食料の確保と貧困の緩和のためには, 安価で効率のよい灌漑施設の整備が前提となる.本論文では, この地域の人口増加に見合う食料を確保するための灌漑政策案を提案した.近い将来に食料自給を達成するためには, 2020年までに灌漑農地面積を約16.8百万haまで拡大していく必要がある.このことは, 今後...

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Published inNettai nōgyō Vol. 45; no. 4; pp. 266 - 274
Main Authors 北村, 義信, 矢野, 友久
Format Journal Article
LanguageEnglish
Japanese
Published 日本熱帯農業学会 01.12.2001
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ISSN0021-5260
2185-0259
DOI10.11248/jsta1957.45.266

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Summary:サブサハラ・アフリカ (以下, SSA地域) では, 急速な人口増加と頻発する干ばつにより, 食料の確保ができず, 食料不足は年々増加の傾向にある.このため, 同地域では輸入と食料援助に頼る傾向をますます強くしている.このことが, SSA地域の恒常的な経済の不安と貧困の原因となっている.この地域における食料の確保と貧困の緩和のためには, 安価で効率のよい灌漑施設の整備が前提となる.本論文では, この地域の人口増加に見合う食料を確保するための灌漑政策案を提案した.近い将来に食料自給を達成するためには, 2020年までに灌漑農地面積を約16.8百万haまで拡大していく必要がある.このことは, 今後20年間に新たに11.0百万haの農地を対象に灌漑システムを整備することであり, 毎年約55万haの整備が必要となる.さらに, 全体耕地面積は毎年1.286百万haずつ (現在の増加速度の2割増) 増加していく必要がある.収量も, 灌漑農地では65.1kg/ha (現在の増加速度の3割増) ずつ, 降雨依存農地では21.5kg/ha (現在の増加速度の5割増) ずつ, 毎年それぞれ増やしていく努力が求められる.したがって, 食料確保のためには, 灌漑開発に加えて, 従来にも増して耕地面積の拡大や降雨依存農地での収量の増加を調和よく進めていかなければならない.灌漑農地, 降雨依存農地における収量の増加を実現させるために, さらなる農業技術の開発・普及が求められる.また, SSA地域における灌漑目的の取水実態を分析し, その結果を基に, 提案した灌漑政策の実施に伴う同地域での取水量の変動を予想した.SSA地域では, 灌漑開発を進めていく上で多くの厳しい制約が存在するため, その推進には慎重な配慮が必要であるが, 特に考慮すべき事項について取りまとめた.
Bibliography:652086
ZZ00014546
ISSN:0021-5260
2185-0259
DOI:10.11248/jsta1957.45.266