前核除去あるいは核膜除去によるマウス雌性発生卵の作出と培養ならびに移植試験

受精直後の卵子の第2極体放出を抑制して作出した3倍体卵子から雄性前核を破壊(方法1),あるいは吸引除去(方法2)して雌性発生卵を作出した。また,対照として3倍体卵子から雌性前核の一方を吸引除去して雌雄両前核を有する2倍体卵子を作出し,その培養ならびに移植試験を行なった。得られた結果は次の通りである。 核膜吸引法を用いた実験1では,前核除去後の雌性発生卵の生存率はC57BL/6およびF1(C57BL/6×CBA)で71~76%であり,F1卵子の41%が培養によって胚盤胞に発育した。また,移植試験の結果,両卵子とも31~33%の着床率を示した。しかし,着床後退行し,最も発育の進んだ例はF1卵子から...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published inKachiku hanshokugaku zasshi (Tōkyō. 1977) Vol. 31; no. 4; pp. 181 - 185
Main Authors 杉江, 佶, 角田, 幸生, 徳永, 智之
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本繁殖生物学会 01.12.1985
Online AccessGet full text
ISSN0385-9932
DOI10.1262/jrd1977.31.181

Cover

More Information
Summary:受精直後の卵子の第2極体放出を抑制して作出した3倍体卵子から雄性前核を破壊(方法1),あるいは吸引除去(方法2)して雌性発生卵を作出した。また,対照として3倍体卵子から雌性前核の一方を吸引除去して雌雄両前核を有する2倍体卵子を作出し,その培養ならびに移植試験を行なった。得られた結果は次の通りである。 核膜吸引法を用いた実験1では,前核除去後の雌性発生卵の生存率はC57BL/6およびF1(C57BL/6×CBA)で71~76%であり,F1卵子の41%が培養によって胚盤胞に発育した。また,移植試験の結果,両卵子とも31~33%の着床率を示した。しかし,着床後退行し,最も発育の進んだ例はF1卵子から得られた25体節期の胎児(妊娠10.5日目)であった。 前核除去法を用いた実験2では,前核除去後のF1卵子の生存率は83%であり,対照区では91%であったこれらの卵子の培養によってそれぞれ48%および67%が桑実胚あるいは胚盤胞に発育した。なおこれらの間には有意差(P<0.05)が認められた。移植試験の結果,雌性発生卵の57%で着床が観察されたが,その後退行死滅することが明らかとなった。1例において生存胎児が得られたが,GPI型より雌性発生卵由来の胚ではないことが確認された。対照区では42%の前核除去卵子が着床し,うち7例(64%)が妊娠18日目の正常胎児に発達した。 以上,正常な個体発生には雌雄両方のゲノムが必要であるとの見解を支持する結果が得られた。
Bibliography:341106
ZZ00021434
ISSN:0385-9932
DOI:10.1262/jrd1977.31.181