農業用微生物資材の研究開発動向のミニレビュー ブレイクスルーに向けた13の取組み

食糧の安定供給と環境負荷の低減(減肥や温室効果ガスの排出削減)を両立する持続的農業を実現するために,微生物資材の開発に対する関心が高まっている。しかし,圃場における微生物資材の成功は依然として予測不可能で信頼性に欠ける。微生物資材は,実験室内での活性に基づいて選択される傾向があり,土壌中での微生物の安定的な生存や機能発現といった圃場において求められる生態学的形質とは大きな隔たりが存在する。このボトルネックを解消するうえで,資材化技術の高度化は極めて重要である。本稿では,既報のレビューによって微生物資材開発の現況を浮き彫りにし,より信頼性の高い革新的な資材を開発するために有用と思われる13 の研...

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Published in土と微生物 Vol. 77; no. 2; pp. 74 - 92
Main Authors 玉木, 秀幸, 菅野, 学
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本土壌微生物学会 31.10.2023
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ISSN0912-2184
2189-6518
DOI10.18946/jssm.77.2_74

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Summary:食糧の安定供給と環境負荷の低減(減肥や温室効果ガスの排出削減)を両立する持続的農業を実現するために,微生物資材の開発に対する関心が高まっている。しかし,圃場における微生物資材の成功は依然として予測不可能で信頼性に欠ける。微生物資材は,実験室内での活性に基づいて選択される傾向があり,土壌中での微生物の安定的な生存や機能発現といった圃場において求められる生態学的形質とは大きな隔たりが存在する。このボトルネックを解消するうえで,資材化技術の高度化は極めて重要である。本稿では,既報のレビューによって微生物資材開発の現況を浮き彫りにし,より信頼性の高い革新的な資材を開発するために有用と思われる13 の研究要素について紹介する。微生物資材が農業現場で機能を発揮するためには,微生物(叢)の環境定着や長期生存を可能にする適切な資材設計から,土壌の物理構造と微生物叢の複雑な関係性の解明や,生態学的知見に基づく新しい施用戦略の策定まで,多面的な検討が必要であり,学際的な取組みを期待したい。
Bibliography:ZZ00016779
950190
ISSN:0912-2184
2189-6518
DOI:10.18946/jssm.77.2_74